翻刻
【右】
胎内(たいない)よりうけて出生(しゆつしやう)し。いとけなき時頭面(つむりかほ)其外へ
瘡瘍(できもの)を發(はつ)し。鼻梁(はなばしら)崩隕(かけおつる)のたゞひもあり。世人は
小児の胎内(たいない)よりうけきくる瘡瘍(そうよう)ゆへ。胎毒(たいどく)〳〵と
一様(いちゆう)に称(ぜう)すれども。其中に瘡毒の胎毒おひほき
なり。かく子孫(しそん)につたふる所は。まつたく癩病(らいびやう)の
血脉(ちづぢ)をひき傳(つた)ふにひとし。又瘡毒病人を看病(かんびやう)
して傅染(てんせん)【「ウワリウツル」 左ルビ】することあり。此病ほどうるさきものは
あらじ。實(まこと)におそろしき病なり。家に一人(ひとり)
【左】
疥癬(ひぜんがさ)を病(やむ)ものあれば。挙家(いひのうち)のこりなく傅住(てんぢう)
するにより。世人疥癬を忌(いみ)きらへども。此病の
傍人(しばにいるひと)に傳染(でんせん)することをさとさず。すべて瘡汁(うみしる)の
ある病。臭気(わるきかほり)のある病は傅染することあり。これ氣の
憑依(ひやうい)【「トリツク」 左ルビ】するところ。をづくべからず。
〇此病を世醫の療治(れうじ)するを見るに。表裏虚実(ひうりきよじつ)を
分別(ふんべつ)せず。山帰来(さんきらい)を主薬(しゆやく)とし。補器補血(ほきほけつ)の剤(くすり)を
用ることは。かりにもなきことのおもひ。此病といへば