翻刻
【右】
壊病(ゑびやう)となして。終身(みをおゝかまで)人をなやまさしむ。
それ壊病といふは。誤治(くすりちがい)によりて毒氣百骸(どくきからだうち)に
結伏(むすびかくれ)し。連綿(れんめん)といへざるなり。始(はじめ)より壊病と
なるの症(しやう)とてはさらになし。雜治(わるき之じ)のたりを
なして。人をそこなひなやますなり。壊病に
なりては。愈ることも遅(おそ)く死(しぬ)ることも速(すみやか)ならず。
年(とし)を積(つ)み月(つき)をかされて。いかばかり苦(くる)しむ
ことなり。此ゆへに貧賤(ひんせん)の者は生業(いとなみ)をうし
【左】
なひ無告(むこく)【「ヤドナシ」 左ルビ】の者となり。果(はて)は道路(だうろ)にさまよひ
斃(たふ)れ死す。あはれなる事ならずや。
〇峻劑(しゆんざい)といふは。正々乳(せい〳〵にう)。七寳丸(しつはうぐわん)。梅肉丸(はいにくぐわん)。薫藥(いふしぐすり)。
膽礬(たんはん)。水銀(みづかね)。生漆(きうるし)。巴豆(はづ)。などの加入藥。法外
いろ〳〵のけやけき藥をいふ。皆それ〳〵の効験(しるし)
あれど。其病に應(をう)ぜざれば。大(おほい)に元氣を損傷(そんしやう)す。
實(じつ)に殺人剣(さつじんけん)【「ヒトヲコロスツルギ」 左ルビ】ともいふべし。世醫の中には。此病を
一か年に十人か二十人療治をなして。是等(これら)の