翻刻
【右】
方劑(くすり)のみを。此病のくすりとこゝろえ。方意(はうい)に
通【「・」 左ルビ】ずることもなければ。用(もちひ)かた混雜(ごたませに)して。角(つの)を
直すく牛(うし)を殺(ころ)すたぐひあり。これ用ひまじき
時に峻劑をみだりに用ひ。元氣を衰(おとろ)へしむるに
より。病を追去(おひさる)ことならず。難治の症となりゆく
なり。古人(こじん)も病(びやう)傷易_レ治(ぢしやすく)。藥(やく)傷難_レ療(れうししがたし)といひり。
すべて。諸藥は毒物(どくぶつ)なれば。人の身に用べき物に
あらず。故に藥をあたにして。かひつて病を
【左】
まうくる人世におほし。平和(ゆはりなる)の藥なりとも。
ふくするは大切(たいせつ)の事なりとこゝろへべし。
古語(こゞ)に藥(くすり)と兵(へい)とは凶器(わるきだうぐ)なりといふ。つね〴〵醫師を
よく〳〵えらび。正(たゞ)しき療治の藥をのむべし。
もつとも正道(しやうたう)なる醫の療治かたは。迂遠(うゑん)【「マハリドヲし」 左ルビ】のやう
にて速(すみやか)に藥(くすり)の効(しるし)見えがたければ。始終(しじう)は
かへつてはかどること。急(いそ)がばまはれといふがごとし。
かくいへばとてやはらかにけがのなきやう