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【右】
のみ心肝をうつすにより。遂(つい)には疾病(やまひ)おほく
して命(いのち)みじかし。それ人のおもんずる所は
命(・)なり。命にまされる寳(たから)あらじ。命みじか
なれば財(たから)の山に入ても更(さら)にかひなし。親(おや)
もてる人主人(しやじん)もちし人は。ことに飲食(いんしよく)女色(ぢよしよく)に
陥溺(かんでき)【左ルビ オボレル】せぬやうに。深(ふか)くをそれつゝしむべき
ことなり。それが中にも瘡毒(そうどく)ほど。世にいたましく
あさましきものはなし。此病(このやまひ)によりて
【左】
痼疾(ほねがらみ)となり。なかくくるしみ。うまれもつかぬ
廃人(かたわ)となり。終(つい)には死(し)にいたる人おびたたし。
此病/高貴(かうき)の人にあることすくなく。下士以下(かしいか)
卑賎(ひせん)のものにあり。質朴(りちぎ)なる者の患(うれへ)るはほと
ぬどまれなり。《割書:余(われ)|》犬馬(けんば)の齢(とそ)すでに七十三にして。
老廢(ろうはい)の身のうへ氣力(きりよく)うすくなり。近きころは佗(た)の
治療(ぢれう)もほどこあず。されども世に此病の多(おほき)をみるに
なげかしく。今(こゝ)茲に瘡毒(そうどく)のみの薬(くすり)と病(やまひ)と醫(いしや)と