翻刻
【上段】
六月廿四日 岩手県知事
○記事
○御救恤 本月(ほんげつ)十五日三|陸地方(りくちほう)非常海嘯の災(さい)に罹りたる趣憫
然に思召(おぼしめ)され 天皇皇后両陛下より岩手県(いはてけん)へ金一万円|宮城県(みやきけん)へ
金三千円|青森県(あおもりけん)へ金千円下し賜(たまは)りたり
○侍従差遣 大海嘯(おほつなみ)の電報十六日午後三時|内務省(ないむしやう)に達するや
松岡次官は急(いそ)ぎ宮内省に出頭(しゆつとう)し土方宮内大臣を経(へ)て惨状(さんじやう)の次第
を奏上に及(およ)びしに畏(かしこ)くも両陛下(れうへうか)には痛く大御心を悩(なや)ませられ直
に侍従(じゞう)試補(しほ)男爵沢宣元氏を中央(ちうわう)気象台(きしやうだい)に差遣はされ被害の模様
を聞き質(たゞ)さしめ給(たま)へり
○侍従を被害地へ派遣せらる 前項(ぜんかう)にも記(しる)す如(ごと)く大海嘯に付(つゐ)
ては 陛下(へいか)は特に大御心を悩まさせ給(たま)ひ十六日|更(さら)に左の御沙汰(ごさた)
侍従子爵 東園 基
宮城岩手両県へ被差遣
あり侍従(じゞう)は十八日の上野発(うへのはつ)の一番汽車にて被害地(ひがいち)に赴かれたり
○皇族の御救恤 東奥海嘯|罹災者(りさいしゃ)へ救恤として各(かく)宮殿下(みやでんか)御一
同(どう)より岩手(いわて)県へ金千円|宮城県(みやぎけん)へ金五百円青森県へ金貮百円|下賜(かし)
せられたり
○中央備荒儲蓄金の支出 海嘯に付(つき)大蔵省(おほくらしやう)は中央|備荒(びくわう)貯蓄金(ちょちくきん)
の内(うち)より去る廿三日|岩手県(いはてけん)へ五万円|又(また)廿日宮城県へ一万円|孰(いづ)れ
も支出せり右(みぎ)は焦眉(せうび)の急を救ふ為(た)めに差当り支出(しゝゆつ)せしものにて
尚ほ調査(てうさ)の上は増加する事(こと)となるべしと云ふ
●巡視及出張
○板垣内務の三陸地方被害地巡視 板垣(いたがき)内務大臣(ないむだいじん)は曩に京阪
地方|巡回中(じゅんくわいちう)なりしが三陸地方|海嘯(かいせう)の報に接するや右(みぎ)巡回を中
止し急行(きうかう)汽車(きしゃ)にて廿二日|午前(ごぜん)八時十分帰京し当日午後二時三十
【下段】
分|上野発(うえのはつ)の直行列車にて直に被害地(ひがいち)へ出発せられたり
○三崎県治局長の出張 三|崎(さき)県治(けんち)局長(きょくちゃう)は左の辞令(じれい)に拠り属官
三名を随(したが)へ被害地へ向(む)け出発(しゅっぱつ)したり
内務省県治局長 三崎亀之助
巌手県下へ出張を命ず
○池田事務官の出張 被害地(ひがいち)視察(しさつ)として逓信省よりは池田(いけだ)事(じ)
務官(むくわん)出張(しつちやう)の命を受け氏(し)は属二名|技手(ぎし)一名を随へ出発したりと
○久米内務参事官の被害地調査 大海嘯(おほつなみ)被害地調査の為(た)め内
務省よりは久米(くめ)参事官(さんじくわん)に属僚二名を付(ふ)し同地方へ向(む)け出発せし
めたり
○国債局員の出張 大蔵省|国債局(こくさいきょく)備荒(びくわう)貯蓄課(ちょちくくわ)にては状況視察
の上(うへ)中央(ちうわう)備荒貯蓄金支出の議(ぎ)を決(けつ)せん為め大蔵|属(ぞく)市川氏(いちかはし)を派遣
せしめたり
○農務局の視察員 農務局は高等官(かうとうくわん)一|名(めい)を派出して三|県下(けんか)被
害地|農作場(のうさざやう)の実況を視察(しさつ)せしむ
○高木内務技師の出発 内務省|衛生局(ゑいせいきょく)は被害地視察の為(た)め技
師高木友恵氏を出発せしめたり
○若槻大蔵書記官 若槻(わかつき)大蔵書記官は巌手県下(いはてけんか)の被害地を巡
視し夫(それ)より宮城県及|青森県(あおもりけん)の被害地を視察(しさつ)する都合(つがふ)にて出張せ
り
○小沢赤十字社幹事の慰問 赤十字社|幹事(かんじ)男爵(だんしゃく)小沢武雄氏は
宮城外二県に於(お)ける海嘯|被害(ひがい)の状況(じやうきやう)視察併せて各地(かくち)負傷者慰
問として病衣(びやうい)千五百枚を巌手県に五百|枚(まひ)を宮城県にニ百枚を青
森県に寄贈する為め携帯(けいたい)したり
○池上気象台技手の出発 中央|気象台(きしやうだい)技手(ぎしゅ)池上稲吉氏は大海(おほつ)
嘯(なみ)実地視察(じつちしさつ)の為め出張を命(めい)ぜられ直に出発(しゅっぱつ)したり
○逓信省技師の出張 逓信省(ていしんしやう)通信局|三根(みね)電信(でんしん)建築技師は宮城