東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 2

小児必用養育草 - 翻刻

小児必用養育草 - ページ 106

ページ: 106

翻刻

【右丁】 冷(ひゆ)るを以 痘瘡(いも)の病としるべしと保嬰論(ほうゑいろん)に見えたり ○痘瘡(いも)序病(じよびやう)の時より皮膚(ひふ)のうちに其 勢(いきほひ)きざす事 なりこれを天日(てんじつ)の光(ひかり)にて見てはみゆる事なし病者の 居所(おりどころ)をくらくして紙燭(しそく)をともしてその光にてすか して見れば皮膚(ひふ)のうちにむら〳〵として瘡(かさ)の勢(いきほひ) 見ゆる物なりその紙燭(しそく)の紙(かみ)は学書(がくしよ)の竹紙(ちくし)《割書:学書の竹|紙とは古き》 《割書:唐紙(とうし)の書物|をいふ也》を以こしらへ小指(こゆび)の大さにして胡麻(ごま)の油(あぶら) にひたし火の上を二三度わたしてともしても油の 落(おち)ぬやうにして見るべしと保嬰論(ほうゑいろん)に見えたり 本邦(ほんほう)にてもかくのごとくする事なり近来(きんらい)は燕脂紙燭(べにしそく) とて紙燭(しそく)に燕脂(べに)をぬり其上を油(あぶら)にひたして用る 【左丁】 なり赤きは陽(よう)の色(いろ)にして痘瘡(いも)の好色(よきいろ)なればかく するなるべしその上 紙燭(しそく)に光(ひかり)ありて能見ゆる事なり   ㊈痘瘡(いも)初(はしめ)て出る所の善悪(ぜんあく)の説 ○痘瘡は陽毒(ようどく)の病(やまひ)なれば陽(よう)にしたがつてまづ面部(めんぶ) にあらはるゝものなり陽明(ようめい)は胃(ゐ)と大腸(だいちやう)とに属(ぞく)して気(き) 血(けつ)ともに多き経(けい)なれば口(くち)と鼻(はな)との両傍(りやうはう)人中(にんちう)の上下 顋(あぎと)【注】 耳(みゝ)年寿(ねんじゆ) 《割書:年寿とは|鼻柱(はなばしら)をいふ》の間に先 出現(いであらはるゝ)ものは吉也 天庭(てんてい)印(いん) 堂(どう)暁星(けうせい)とて面(おもて)の真中(まんなか)眉(まゆ)の上より髪(かみ)の生際(はへぎは)までの 間に痘(いも)の出る事多きは悪候(あくこう)也 頭(かしら)は諸陽(しよよう)の聚会(しゆくわい)す る処(ところ)両の額(ひたい)は五蔵(ござう)精華(せいくは)の処 咽(いん)《割書:咽(いん)ののんどゝいふはうしろのかた|の穴(あな)にて飲物(のみもの)食(くい)物の通(つう)ずる所》 《割書:なり》は水穀(すいこく)の道路(だうろ)の処 喉(こう)《割書:喉ののんどゝいふは前の穴にてのどぶえに|して気(き)の通(つう)ずる所なり》 【注 資料の字面「𦝰」は「病む」という義なので、文意からは振り仮名の「あぎと」が妥当で「腮」の誤記だと思われる。然れども「腮」は「顋」の俗字ですので、「顋」と刻字。】