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【右丁】
米泔水にて洗ふ事はなしと答へ侍りぬ然れは中花(もろこし)も
朝鮮(てうせん)も我国(わかくに)のごとく俗礼(ぞくれい)となして善悪(せんあく)共に湯(ゆ)を
掛(かく)る事はなきにや 本邦(ほんほう)にては収靨(かせ)の後 米泔水(こめのとぎしる)にて
浴(ゆあみ)せざれは痘瘡(いも)膿(うみ)かへりて悪しき事多し湯の掛時
にはやしおそしありたやすき痘瘡は十一日十二日ぶ
りにいたりて頭(かしら)面(おもて)胸(むね)腹(はら)かせたる時を見合 手巾(てぬぐひ)を湯
にひたししぼりて痘の上を押つけて温(あたゝめ)たるがよき
なり和 俗(そく)これを一番湯といふ中一日ありて二番湯
を掛べし其時は盥(たらい)のうちに入れて洗(あら)ふべきなり何ほ
ど軽(かろ)き痘瘡(いも)なり共久しく洗ふ事なかれ虚弱(きよじやく)なる
小児或は痘瘡多く出たる者は一番湯はまづ祝儀(しうぎ)ばかりに
【左丁】
掛そめて二番湯の時とくと洗ふべきなり痘の後は
元気(けんき)虚(きよ)し皮膚(ひふ)うすき事なれば行水(ぎやうずい)する事久し
けれは元気つかれ或は風をひきやすく変(へん)じて悪証
となるものなり湯を掛るの前に上手の医師 功者(こうしや)
の人に相談(さうだん)してよき時分を見あはせて湯をな
すべきなり多くは湯の掛時あしき故に変証(へんしやう)出来(いでき)
て死する者あり可心得事也
○痘瘡に掛る湯のこしらへやう米をかしたる汁
を用るに一番とぎははへてその汁を捨(すて)て二番とぎ
汁壱斗に酒五合を入て沸湯(にへゆ)となして洗ふべし
熱(あつ)からず冷(つめた)からず能ほどにして沐浴(もくよく)すべきなり