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【右丁】
鼠(ねすみの)糞(ふん)を入る者もあれ共鼠糞は毒(とく)あれは人によ
りてかへつて瘡痕(かさあと)たゞるゝ者あり用さるがよ
きなり
○痘瘡 軽(かろ)きものは十一日より十五日まての間見合て
湯を掛べきなり重(おも)きものは廿日より三十日の間に
なすべきなりかならず日数(ひかず)にかゝわるべからすそのよき
時分を見合 老医(らうい)にとひて指図(さしづ)をうくべきなり
○魏直(ぎちよく)が博愛心鑑(はくあいしんかん)に里中(りちう)に痘瘡(いも)流行(りうかう)せし時 或家(あるいへ)
の前(まへ)に痘瘡多く出て目(め)も鼻(はな)もわからず喘息(ぜんそく)短(たん)
気(き)にして死(し)をまつやうなる児(ちご)を抱(いだ)きたる老婆(らうは)【左ルビ:うば】
ありけるにその明(あく)る日またその家のまへを通(とを)りけるに
【左丁】
きのふの小児その痘よく収靨(かせ)て右の危(あやう)き証すき
と本 復(ぶく)する勢(いきほひ)あり魏直(ぎちよく)あやしくおもひてその
故(ゆへ)をとへば老婆(らうは)のいはく水楊(すいやう)の枝葉(ゑたは)五斤(ごきん)大釜に
て煎(せん)じて浴(ゆあみ)させたればかく清快(せいくはい)なりと答(こた)へける
を聞て魏直此 伝(でん)をえてしきりに痘瘡の危(あやうき)証
を洗ふに験(しるし)をとる事多しと見えたり《割書:啓益》按ずるに
水楊(すいやう)は和名(わめう)川柳(かはやなぎ)といひ又は丸 葉(ば)柳(やなぎ)といふ本草(ほんさう)を考(かんがふ)る
に此ものよく瘡毒(さうどく)の熱(ねつ)をさるの功能(こうのう)あり米泔水(こめのとぎしる)
にてあらひても痘瘡かせかぬる時は水楊(すいやう)の煎湯(せんたう)に
て洗(あら)ふべきなりつねにこゝろみて験(しるし)をとるなり
㊂痘瘡(いも)落痂(らくか)の時節(しせつ)善悪(せんあく)の説(せつ)