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【右頁】
たり此 紙燭(しそく)をなさは紙縷(かうより)を大きにひねりかたからぬ様に
して胡麻(ごま)の油(あぶら)にひたし紙燭にして用べき也 赤水玄(せきすいげん)
珠(しゆ)の説(せつ)には紙燭にて焼切児子の元気 甦(よみがへり)て後に米(こめの)
醋(す)を熱(あつ)くして臍蔕(ほそのを)の焼(やき)目を洗(あらふ)べし是 秘方(ひはう)なりと
見えたり《割書:啓益|》常(つね)に此事をこゝろみて驗(しるし)をとりたる事
多し
㊄臍蔕(ほそのお)を断(たつ)の説(せつ)
◯臍蔕を断の法 竹篦(たけべら)を用へし鐡(てつ)の刃物(はもの)を用へからず
輭(やはらか)なる絹にて臍蔕をつゝみ或は單(ひとへ)の絹(きぬ)にまきて歯(は)に
て噛断(かみたつ)べし長(なが)からしむる事なかれ短(みじか)くすべからず生子の
足掌(あなうら)《割書:足の裏(うら)|をいふ也》の長(ながさ)にくらべて断べし長(なが)ければ外(ほか)より
【左頁】
風を引やすし短(みじか)ければ内臓府(うちざうふ)を破(やぶ)る臍蔕の内に
蟲(むし)を生(しやう)ずる事まゝこれあり速(すみやか)に拂去(はらひさる)べししからざ
れば腹(はら)に入て病となると王隠君(わうゐんくん)の説にみえたり
◯本邦の風習(ふうしう)にて収婆(とりあけばゝ)まづ浴(ゆあみ)せざる前(さき)に生れ子の足(あな)
掌(うら)の寸にくらべ又は己(おのれ)が季指(こゆび)の長にくらべて臍蔕を
断(たつ)なり《割書:啓益|》按(あん)ずるに臍蔕(ほそのを)を断の法右にいふ所のごとく
寸法(すんほう)を定(さだ)めて断べき所を紙縷(かうより)にてきびしく結(ゆひ)て竹篦(たけへら)
にて切断(きりたつ)べし扨臍蔕を断たる跡(あと)を輭(やはら)かなる絹にても又は
杉原(すぎはら)の紙をよく揉(もみ)て成共【注】二重(ふたへ)ほどつゝみ糸(いと)を以きびし
くまきて産湯(うぶゆ)をなすへしかくのごとくせざれは水湿(すいしつ)の
氣臍蔕の断目より入りて病を生する事多し
【注 なりとも=断定の助動詞「なり」に接続助詞「とも」の付いたもの。この語は中世末・近世に多用されるが近代には衰える。多くの場合、「~でも…でも」、どちらにもこだわらない意。何なりとも。】