東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 2

小児必用養育草 - 翻刻

小児必用養育草 - ページ 14

ページ: 14

翻刻

【右頁】 いひて中花の書(ふみ)に多くのせ侍れと 本邦(ほんほう)にては其 益(ゑき)少(すくな) したゞ黄連(わうれん)の法と蜜薬(みつぐすり)とを用てよろし其外 本邦 の小児醫師(せうにいし)その家(いへ)〻の秘(ひ)方の五香湯(ごかうたう)とて初生(しよせい)に用る 薬(やく)方あり多くは藿香(くはつかう)木香(もつかう)丁香(ちやうかう)沈香などの入たる薬剤(やくざい) にて病なき小児に益なし用ずして可(か)なりしきりに黄 連の法又は蜜薬とを用てけかれたる物を吐(はき)出さすべし吐(はき)つ くして後は甘草少はかり用てよし   ㊃児子 取擧様(とりあげやう)の説(せつ) ◯児子(ちご)生れ下る時其 啼聲(なきごゑ)を待(また)ずして甘草のひた し汁(しる)に絹(きぬ)をつけて指(ゆび)をつゝみ児子の口中をぬぐひ又は蜜 薬黄連の法などを用ひ収婆(しうは)【「ばゝ」左ルビ】に命(めい)じてまづ臍蔕(ほそのお)を 【左頁】 断(たち)て産湯(うぶゆ)をなして取擧(とりあぐ)る事これ 本邦(ほんほう)の俗習(ぞくしう)な り産湯をなす所 戸障子(としやうじ)をさし或は屏風(べうぶ)を引まはし て風のいらぬやうにしつらひて浴(ゆあみ)すべきなり ◯難産(なんざん)の時は多(おほ)く母(はゝ)にのみ心を付て児子の事におよば す取擧(とりあぐ)る事おそければ冬月(ふゆのつき)は寒気(かんき)におかされ生子こゞ へて死(し)するに至(いた)る事多し此時はまづ臍蔕(ほぞのを)を断(たつ)べから ずすみやかに絮(わた)をあぶりあたゝめ児子をつゝみて懐(ふところ)に 抱(いだ)き胞衣(ゑな)を火にてあたゝめ大きなる紙燭(しそく)をとりて臍(ほそ) 蔕(のお)の上を往來(わうらい)して焼切(やききる)べしかくのごとくすれば暖(あたゝか)なる 気児子の腹(はら)のうちに通(つう)じてしばらくの間に元気(げんき)甦(よみがへり)て 生(いき)出るなり尤 浴(ゆあみ)する事をいむなりと保嬰撮要(ほうゑいさつよう)【注】に見え 【注「保嬰撮要」 1556年に出版された小児医学書 薛鎧著、薛己注釈】