東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 2

小児必用養育草 - 翻刻

小児必用養育草 - ページ 52

ページ: 52

翻刻

【右頁】 小児のみにあらず乳母(めのと)にも此 類(るい)の食物(しよくもつ)をあたゆへからず 富貴(ふうき)の家(いへ)はその児を愛(あい)する事 甚(はなはだ)しくて二三 歳(さい)まで も乳味(にうみ)ばかりを飲(のま)しめて飲食(いんしよく)をたえてあたへざる類 多しかくのごとくなれは其児の脾胃(ひゐ)窄(すぼ)く虚弱(きよじやく)にして 病(やまひ)多(おほ)しといへり 日本にてもその子を愛(あい)し過(すご)して二三 歳(さい)まではかつて食事をあたへず乳(ち)ばかりをのましめて そだつる家(いへ)多し又はなまものじり【注】の人は佛経(ぶつきやう)に母(はゝ)の 乳味(にうみ)百八拾石を以 養(やしな)ふと説(とき)給(たま)ひ又 行基菩薩(ぎやうぎぼさつ)の御詠哥(ごゑいか)にも  百(もゝ)くさに八十(やそ)くさそへて給(たま)ひてし   乳房(ちふさ)のむくひいまぞわれする とありて生れ落(おつ)るとそのまゝ乳(ち)を飲(のみ)そめて六 歳(さい)まで【注 「なまものじり」=いいかげんの知識しかないのに物知り顔をすること】 【左頁】 毎年(まいねん)乳味(にうみ)三十石 宛(あて)にして三六百八拾石を飲盡(のみつく)すこと はりなどいひて六歳の比(ころ)まで乳(ち)をあたふる類(たぐひ)の人在り 《割書:啓益|》按(あん)ずるに此等(これら)の事よろしからぬ説(せつ)なり小児に 食をあたへそむる事は半年の後又は十月ばかりの比 生子に歯(は)のはゆる時をまちて食をあたふる時と定(さだ)む べしこれ天理(てんり)の自然(しぜん)なり歯(は)のはゆるは食をくわんため なる事をしるへし二歳半の比までは乳を多くのませ食 をすくなくあたへよ三歳より四歳までは食を多く乳を すくなくあたへたるがよきなり五歳よりは乳をのまする 事あるへからず或(あるひ)は歯(は)いまだはへざるにしひて食をあた ゑ或は半年の後又は誕生日(たんぜうにち)の前後(ぜんこ)まで食をして