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【右頁】
小児のみにあらず乳母(めのと)にも此 類(るい)の食物(しよくもつ)をあたゆへからず
富貴(ふうき)の家(いへ)はその児を愛(あい)する事 甚(はなはだ)しくて二三 歳(さい)まで
も乳味(にうみ)ばかりを飲(のま)しめて飲食(いんしよく)をたえてあたへざる類
多しかくのごとくなれは其児の脾胃(ひゐ)窄(すぼ)く虚弱(きよじやく)にして
病(やまひ)多(おほ)しといへり 日本にてもその子を愛(あい)し過(すご)して二三
歳(さい)まではかつて食事をあたへず乳(ち)ばかりをのましめて
そだつる家(いへ)多し又はなまものじり【注】の人は佛経(ぶつきやう)に母(はゝ)の
乳味(にうみ)百八拾石を以 養(やしな)ふと説(とき)給(たま)ひ又 行基菩薩(ぎやうぎぼさつ)の御詠哥(ごゑいか)にも
百(もゝ)くさに八十(やそ)くさそへて給(たま)ひてし
乳房(ちふさ)のむくひいまぞわれする
とありて生れ落(おつ)るとそのまゝ乳(ち)を飲(のみ)そめて六 歳(さい)まで【注 「なまものじり」=いいかげんの知識しかないのに物知り顔をすること】
【左頁】
毎年(まいねん)乳味(にうみ)三十石 宛(あて)にして三六百八拾石を飲盡(のみつく)すこと
はりなどいひて六歳の比(ころ)まで乳(ち)をあたふる類(たぐひ)の人在り
《割書:啓益|》按(あん)ずるに此等(これら)の事よろしからぬ説(せつ)なり小児に
食をあたへそむる事は半年の後又は十月ばかりの比
生子に歯(は)のはゆる時をまちて食をあたふる時と定(さだ)む
べしこれ天理(てんり)の自然(しぜん)なり歯(は)のはゆるは食をくわんため
なる事をしるへし二歳半の比までは乳を多くのませ食
をすくなくあたへよ三歳より四歳までは食を多く乳を
すくなくあたへたるがよきなり五歳よりは乳をのまする
事あるへからず或(あるひ)は歯(は)いまだはへざるにしひて食をあた
ゑ或は半年の後又は誕生日(たんぜうにち)の前後(ぜんこ)まで食をして