翻刻
【右頁】
妻子(さいし)を養(やしな)ふことをえすその不慈不孝(ふじふかう)たる憐(あはれ)ま
ざらんや予《割書:|か》家弟(かてい)貞庵(ていあん)啓益(けいゑき)は幼(よう)より毉(い)を學(まなん)で
おこたりやまず巻(まき)を京師(きやうし)に負(お)ひ友(とも)を東武(とうぶ)に
もとめて終(つい)にその道(みち)の功(こう)なりぬ中ころ
中津侯(なかつこう)小笠原君(おかさはらくん)につかへて侍毉(じい)となれり
いまは辞(じ)して平安城(へいあんじやう)にあそび市にかくれて
みつから牛山翁(ぎうざんおう)とよぶ吐納(となう)のいとま世人(くにたみ)の慈幼(じよう)
におろそかなることを患(うれ)ひそのことをかんなにかきて
小兒養育草(せうにそだてぐさ)となづけ婦人愚夫(ふじんぐふ)のもてあそ
【左頁】
ひくさともせよとて故國(ここく)なる家族(かそく)にしめす僕(やつかれ)
この書をよむに初生よりの養育(やういく)と痘疹(いもはしか)のことお
よび十 嵗(さい)までの教誨(おしへ)をつまびらかにしるせりこ
のこゝろおもへらく古人(こしん)小兒(せうに)を芽兒(げじ)といひまた
㜛蘂嬌花(なんずいけうげ)といひて草木(くさき)の初(はじめ)て萌出(もえいて)花(はな)の初(はじ)
めてほころぶるにたとへはべれはそだてざら
めやよつてその名(な)にとれり啓益さきに婦(ふ)
人(じん)壽草(ことぶきぐさ)といふ書(ふみ)をあらはして世(よ)におこなはる
これにつぐにこの書なくんばあるべからすいかん