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【右丁】
覚(おぼ)え侍らずと答(こたへ)しなり此人 言(こと)を食(はむ)者にあらず其後
《割書:啓益》暇(いとま)の日 法苑珠林(はうおんじゆりん)を考(かんかふ)る事ありしに此病にひ
としき事を載(のせ)たり法苑珠林百十巻 賞罰(しやうばつ)の篇(へん)に
阿育王経(あいくわうきやう)にいはく阿育王(あいくわう)の病 口中(こうちう)臭(くさ)き事 糞(ふん)のご
とく身中(しんちう)の毛孔(けあな)より糞汁(ふんじう)流出(ながれいで)て臭(くさき)事 限(かきり)なし阿(あ)
育王(いくわう)の后(きさき)帝失羅(ていしつら)国中(こくちう)に触(ふれ)をなして王(わう)の病(やまひ)に似(に)たる
者あらば召連(めしつれ)て来るべしと在けれはひとりの小児王の
病にひとしき者ありて来れり此児の腹(はら)を割(さき)てみれは
怪(あや)しき形(かたち)の虫(むし)ありて動(うご)き走(はし)る医師(いし)に仰(おほ)せてさま
〴〵の毒薬(どくやく)を以せめけれども此虫ひるむ事なし葱(ひともじ)の
白根(しろね)の煎汁(せんじしる)をそゝぎかけたれは忽(たちまち)死(し)にけり則(すなわち)葱の
【左丁】
白根の煎汁を阿育王(あいくわう)にすゝめ奉りけれはあやしき
形(かたち)の虫大便より通(つう)じて其病 愈(いへ)たりと見えたり《振り仮名:ケ様|かやう》
なる事も世(よ)にあること事なれは医師(いし)たらん者は見聞(けんぶん)に
広(ひろ)ければ其 益(ゑき)多(おほ)き事なりいま城氏(しやううぢ)の物かたりにひとし
ければこゝにしるし侍りぬ
小児必用養育草巻二終