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【右丁】
ひたすら甘(あま)き物をすゝむるによりて是又 脾胃(ひゐ)に鬱(うつ)
滞(たい)し湿熱(しつねつ)を生(しやう)じてその湿熱(しつねつ)によりて腹中(ふくちう)に
あやしき虫(むし)を生ずるなりこれを疳虫(かんちう)といふなり又
小児 吐乳(とにう)久しくやまず或は泄瀉(せつしや)久しくやまず或は
汗(あせ)久(ひさ)しくやまず或は瘧(おこり)久しくおちす或は喉嗽(しはぶき)久しく
やまず頭瘡(かしらのかさ)久しく愈(いへ)ずかくのごときの病(やまひ)久しき
ときは津液(しんゑき)かはき脾胃虚(ひゐきよ)損(そん)じて疳疾(かんしつ)をなす事
なり此病 始(はじめ)てきざす時は萑目(とりめ)【ママ 隹の誤ヵ】の症(しやう)となり漸々(ぜん〴〵)に
眼(まなこ)あしく色(いろ)黄(き)ばみ青(あを)く青 筋(すぢ)をあらはし形(かたち)痩(やせ)てそ
の腹(はら)ひとり脹大(ちやうだい)にして蜘(くも)のごとく臍(ほぞ)突(つき)出る者は死症(ししやう)
なり此病小児 毎(ごと)に多きか少(すくな)きかなき者はなし其 療治(りやうぢ)
【左丁】
多くは虫を化(くは)し下して利(り)を得る事あり 本邦(ほんほう)の
医家(いけ)にも俗家(ぞくか)にも五疳(ごかん)の妙薬(めうやく)多し虫気(むしけ)の病な
れは同気(どうき)相 求(もと)むるの理(ことわり)にや其薬多くは虫(むし)の類(たぐい)を用る
なり蜈蚣(むかで)鱔鰻(やつめうなぎ)赤蝦蟆(あかがいる)柳虫(やなぎむし)桑虫(くはのむし)恒山(くさぎ)虫(むし)山蚕(やまゝゆ)【蠶は旧字】桑螵蛸(おほぢのふぐり)
の類を用て黒焼(くろやき)にして用て利(り)を得る事多し又疳の
虫気に鰻鱺魚(うなぎ)をやきて鍋墨(なべすみ)を細末(さいまつ)してつけて食(くら)
はすれは疳虫(かんちう)を殺(ころ)し黄(き)ばみ痩(やせ)たるを治(ぢ)するなり万葉集(まんようしう)
の哥(うた)に
石麻呂(いしまろ)にわれものもうす夏(なつ)やせに
よきといふなるうなきとりめせ
とよみてわか 日本にても古来(こらい)より伝(つた)へ来りて