翻刻
【右】
なるを良(よし)とす若(も)し其(その)屋敷地面卑(やしきぢめんかき)かへして湿気(しつけ)多(おほ)
く或(あるひ)は掃除(さうぢ)を怠(おこた)りて汚芥(ごみあくた)積滞(つもりたま)るときは家中(やうち)の
空気(くうき)も自然(しぜん)に不潔(ふけつ)と晝夜(ちうや)此(この)悪気(あくき)の中(うち)に視(おき)
息(ひし)すれば遂(つひ)に病(やまひ)を生(しやう)ずるに至(いた)るべし
<第二>住居(すまひ)の床(ゆか)は成(な)るべく高(たか)くして其下(そのした)に十分(じふぶん)
風(かぜ)を通(つう)ずべし地上(ちじやう)へ直(ぢき)に床(ゆか)を設(まう)くべからず湿(しつ)
氣(け)なる土地(とち)にては殊(こと)に危(あやう)し
<第三>大小便所(だいせうべんじよ)は最用心(もつともようじん)して清潔(せいけつ)に掃除(さうぢ)し度々(たび〳〵)
両便(りやうべん)を取除(とりの)くべし久(ひさ)しく両便(りやうべん)を貯(たくは)ふるときは
腐(くさ)れ出(いだ)して一種(いつしゆ)の悪気(あくき)を醸(かも)し之(これ)が為(た)めに家中(やうち)
【左】
の空気(くうき)不潔(ふけつ)となるべし虎列刺病(これらびやう)熱病(ねつびやう)等(とう)流行(りうかう)す
るときは特(べつだん)に用心(ようじん)して掃除(さうぢ)を怠(おこた)るべからず
<第四>下水溝渠(けすゐみおどふ)は成(な)るたけ住居(すまひ)より遠(とほ)く離(はな)る
を宐(よろ)しとす其中(そのなか)に瀦(たま)りたる汚水(よごれみづ)は日(ひ)を経(ふ)るに
従(したが)ひて次第(しだい)に腐(くさ)れ出(だ)し亦(また)一種(いつしゆ)の悪気(あくき)を醸(かも)して
家中(やうち)の空気(くうき)を汚(よご)すこと両便所(りやうべんじよ)に異(こと)ならず故(ゆゑ)に下(げ)
水(すい)を通(とほ)すには軒下(のきした)より二間餘(にけんよ)も隔(へだ)てゝ設(まう)け時(とき)
々(〴〵)之(これ)を洗(あら)ひ流(なが)し決(けつ)して汚芥(ごみあくた)の瀦(たま)らざる様(やう)に心(こゝろ)
掛(が)くべし但(たゞし)此(この)汚水(よごれみづ)は酌(く)み取(と)りて両便(りやうべん)と共(とも)に培(こや)
料(し)に用(もち)ふべし総(そう)じて五穀野菜草木(ごこくやさいさうもく)の培料(こやし)に供(きよう)