翻刻
【右丁】
一権現(いちのこんけん)祠
姥(うは)か池(いけ)
【図】
【枠内】一ノこんけん
【枠内】槐
【枠内】うはか池
【枠内】弁天
【左丁】
きて見(み)むと思(おも)ひある時(とき)道行人(みちゆくひと)ありと告(つけ)て男(おのこ)の如く出立(いてたち)て彼石(かのいし)に
臥(ふし)けりいつもの如く心得(こゝろえ)て頭(かしら)を打(うち)くたきけり急(いそ)き物(もの)とも取(とら)むとて
引(ひき)かつきたる衣(きぬ)をあけて見(み)れは人 独(ひとり)なりあやしく思(おも)ひてよく〳〵
みれは我娘(わかむすめ)なり心(こゝろ)もくれまとひてあさましとも云(いふ)はかりなし夫(それ)
より彼(かの)父母(ふほ)すみやかに発心(ほつしん)して度々(たひ〳〵)の悪業(あくけふ)をも慙愧(さんき)懺悔(さんけ)して今(いま)の
娘(むすめ)の菩提(ほたい)をも深(ふか)くとふらひはへりけると語伝(かたりつた)へけるよし古老(こらう)の人申けれ
は
つみとかの くつる( つくるィ )世もなき石枕(いしまくら)さこそはおもき思(おもひ)なるらめ
当所(たうしよ)の寺号(しかう)浅草寺(せんさうし)といへる十一面( 千手ィ )観音(くはんおむ)にてはへりたくひなき
霊仏(れいふつ)にてまし〳〵けるとなむ《割書:下略|》
一権現(いちのこんけん)社《割書:同所 顕松院(けんしようゐん)の境内(けいたい)にあり土俗(とそく)あかむ堂(たう)と云 往古(むかし)当寺(たうし)本尊 観世音(くはんせおむ)出現(しゆつけん)のとき|草刈(くさかり)の輩(ともから)蓼(あかさ)をもつて柱(はしら)としひとつの草堂(さうたう)を建(たて)て彼(かの)霊像(れいさう)を安置(あんち)し奉(たてまつ)りし旧跡(きうせき)》
《割書:なり故(ゆへ)にあかさ堂(たう)と唱(とな)ふへきを後世(のち)謬(あやまつ)て阿加牟堂(あかむたう)と|いへり傍(かたはら)に観音影向(くはんおむやうかう)の槐(ゑんしゆ)あり》
六地蔵石灯籠(ろくちさうのいしとうろう)《割書:雷神門(らいしんもん)の外(そと)花川戸町(はなかはとまち)の入口 角(かと)にあり故(ゆへ)に土人(としん)此所の河岸(かし)をさして六地蔵(ろくちさう)|河岸(かし)といへりこの地は往古(むかし)より奥州海道(あうしうかいたう)の馬次(むまつき)なりしとそ其頃(そのころ)はくわんおんの》