翻刻
【右丁 絵図】
白鬚(しらひけ)明神(みやうしん)社
【左丁】
百五拾人(ひやくこしふにん)討死(うちしに)す《割書:中畧|》同十年正月廿五日豊島(としま)勘解由(かけゆ)左衛門(さゑもん)か平塚(ひらつか)の
要害(えうかい)へ押寄(をしよせ)責(せめ)けれは其(その)暁(あかつき)没落(ほつらく)して敵(てき)は猶(なを)九間城(くまのしろ)小机(こつくへ)の城(しろ)に
籠(こもる)と云云
犬追物(いぬをふもの)上覧地(しやうらんのち) 同所 道(みち)より右(みき)の方(かた)畑(はたけ)の地(ち)を指(さし)て云(いふ)詳(つまひらか)に林(はやし)春齊(しゆんさい)先生(せんせい)
の作(さく)せる犬追物記(いぬをふものゝき)に出(いて)たり《割書:江戸(えと)名所(めいしよ)圖會(つゑ)拾遺(しふゐ)に詳(つまひらか)に記(しる)す|因(よつ)てこゝに畧(りやく)せり》
飛鳥山(あすかやま) 數萬歩(すまんほ)に越(こえ)たる芝生(しはふ)の丘山(をかやま)にして春花(しゆんくは)秋草(しうさう)夏凉(かりやう)冬雪(とうせつ)
眺(なかめ)あるの勝地(しやうち)なり始(はしめ)元亨(けんかう)年中 豊島(としま)左衛門(さゑもん)飛鳥祠(あすかのやしろ)を移(うつ)す《割書:祭(さい)|神(しん)》
《割書:事代主(ことしろぬしの)|命(みこと)なり》因(よつ)て飛鳥山(あすかやま)の号(な)あり寛永(くはんえい)年中 王子(わうし)権現(こんけん)御造営(こさうえい)の時(とき)此(この)山(さん)
上(ちやう)にある飛鳥祠(あすかのやしろ)を遷(うつ)して權現(こんけん)の社頭(しやとう)に鎮座(ちんさ)なしけり其後(そののち)元文(けんふん)
の頃(ころ) 台命(たいめい)によつて桜樹(あうしゆ)千株(せんちゆう)を植(うへ)させらる内(うち)には遊観(いうくはん)の便(たつき)とし
外(ほか)には蒭堯(すうけう)の為(ため)にす年(とし)を越(こえ)て花木(くはほく)林(はやし)となる爾(しかつ)しより騒人(さうしん)墨(ほく)
客(かく)は句(く)を摘(つみ)章(しやう)を尋(たつ)ぬ牧童(ほくとう)樵夫(せうふ)は秣(まくさ)を刈(かり)薪(たきゝ)をとる殊(こと)にきさらき
やよひの頃(ころ)は桜花(あうくは)爛漫(らんまん)として尋常(よのつね)の観(くはん)にあらす熊野(くまの)の古式(こしき)に