翻刻
【右丁】
春(はる)は花(はな)を以(もつ)て祀(まつ)るといへるに相合(あいくわつ)するもの欤(か)
《割書:元文(けんふん)四年の春(はる)冷泉(れいせん)前大納言(さきのたいなこん)為久卿(ためひさきやう)関東(くはんとう)下向(けかう)の折(をり)から鳴島(なるしま)信(のふ)遍に命(めい)して此山のさくらを|為久卿へ贈(をく)られけるに》
《割書:飛鳥山(あすかやま)といふ所の花とて人の見せける若木(わかき)の枝(えた)の殊(こと)にうるはしき色香(いろか)も|世に似(に)すそおほえし江戸(えと)よりはかけふむはかりの近(ちか)さなれと行(ゆき)て見ぬ思ひを》
《割書:霞(かすみ)の関(せき)にとゝむるはかりになむ
|》
折枝の色香をみすは飛鳥山花の所の春もしられし 為久
《割書:明年(あくるとし)再(ふたゝ)ひ御下向(おんけかう)の時御出立に今年(ことし)は飛鳥の花も御見せなきよしにて|》
咲ぬともつけぬ飛鳥の山桜こその言葉の色やわすれし 同
《割書:とありしかはいそき金輪寺(きんりんし)へ仰(おほせ)ありて一枝の花を手折(たをり)せこれをもたせて品川(しなかは)の宿(しゆく)にて|御覧(こらん)にいれける》
飛鳥山碑銘並序
惟峯國之鎭曰熊埜之山有神曰熊埜之神實伊弉
冊尊也配祀伊弉諾尊事解王子或稱之三神事解
別爲飛鳥之祠三狐神副焉語在神史中別録藏焉
誌曰在替元亨中武之豐島郡豐島氏剏兆豐島郡
爲熊埜神坐地之曰王子山之曰飛鳥蓋自此始也
熊埜之川曰音無川流象焉爾來四百有祀土人以
昔祀之如一日矣祀典曰熊埜之神春以花祀鼓之
吹之旗之歌之舞之今之王子祀日鼓吹旗歌舞者
其來也尚矣而世之邈祠宇荒壊風日不蔽越曁寛
永中有司奉命祇飾祠事乃因故兆新之遂遷飛鳥
【左丁】
音無川(をとなしかは)
蘭亭高帷馨
飛鳥山前漲碧渓
春來芳樹自成蹊
年年載酒看花處
不似桃源使客迷
金輪寺
堰埭(いせき)
音無川