翻刻
【見開き 絵図】
【右丁】
飛鳥橋(あすかはし)の
あたりは
貨食舗(りやうりや)の
亭造(やつくり)壮麗(さうれい)
にして
後亭(さしき)の
まへには皎潔(こうけつ)たる
音無川(をとなしかは)の
下流(なかれ)をうけて
生洲(いけす)をかまふ
この地(ち)はるかに
都下(とか)を離(はな)るゝといへとも
常(つね)に王子(わうし)の
稲荷(いなり)へ詣(まふ)する人こゝに
憩(いこ)ひ終日(ひねもす)流(なかれ)に
臨(のそ)むふ宴(ゑん)を
催(もよほ)し沈醉(ちんすい)
するも
多(おほ)し夏日(かしつ)は
【左丁】
殊更(ことさら)凛々(りん〳〵)たる河(かは)
風(かせ)に炎暑(ゑんしよ)を
避(さけ)て帰路(きろ)に
おもむかん事を
忘(わす)るゝの輩(ともから)も
又 少(すくな)からす