東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト 5 江戸名所図会

江戸名所図会 20巻 巻之15 - 翻刻

江戸名所図会 20巻 巻之15 - ページ 31

ページ: 31

翻刻

【右丁】  大般若経(たいはんにやきやう)巻(くわん)第(たい)三百四十九《割書:今(いま)一巻(いちくはん)を傳ふるのみ余(よ)は宝暦(はうりやく)六年 上刕(しやうしう)脇屋村(わきやむら)正法寺(しやうほうし)|観音(くはんおん)へ奉納(ほうのう)せしといへり其巻末に》  《割書:奉施入武州豊島郡熊野権現御寶前文保二年戊午初秋|大施主右衛門尉平行泰敬白とあり》  古證文(こしやうもん)二通(につう)《割書:北条(ほうてう)氏政(うちまさ)氏直(うちなを)神領(しんりやう)|寄附(きふ)の證文(しやうもん)なり》  蘆屋釜(あしやかま)一口(いつこう)《割書:共(とも)に北条(ほうてう)氏直(うちなを)|の奉納(ほふなふ)なり》  祭禮(さいれい) 例年(れいねん)七月十三日にして十貮番の拍板(ひんさゝら)あり《割書:此日 王子村(わうしむら)の童子(わらんへ)|手毎(てにて)に竹(たけ)の鉾(ほこ)を持(もち)》  《割書:て警固(けいこ)す祭(まつり)終(をはつ)て後(のち)参詣(さんけい)の貴賤(きせん)彼(かの)鉾(ほこ)を携(たつさ)へて皈(かへ)り火災(くはさい)盗難(とうなん)を除(のそ)くの守護(まもり)とす是|も古(いにしへ)よりの習俗(ならはせ)とそ聞(きこ)えし其外一季七十余度の祭祀(さいし)連綿(れんめん)として國家(こくか)安寧(あんねい)五穀(ここく)豊(ふ)》  《割書:饒(ねう)の祷(いのり)怠慢(たいまん)なし|》  本地堂(ほんちたう)《割書:本社の左にあり弥陀(みた)藥師(やくし)千手(せんしゆ)|大悲(たいひ)を安置(あんち)せり》  飛鳥祀(あすかのやしろ)《割書:同し所に並ふ祭神は事代主(ことしろぬし)の命(みこと)なり元亨(けんかう)年中 豊島(としま)左衛門なるもの|勧請(かんしやう)す始(はしめ)飛鳥山(あすかやま)にありしか寛永(くはんえい)の頃(ころ) 台命(たいめい)に依(よつ)て當社の境内(けいたい)に》  《割書:迁坐(うつ)|す》康家(やすいへ)清光(きよみつの)社(やしろ)《割書:同本社の左にあり是 豊島(としま)太郎 康家(やすいへ)同 権頭(こんのかみ)清光(きよみつ)父子(ふし)の|霊(れい)を鎮(まつ)る其余 末社(まつしや)多(おほ)しといへともこゝに畧す》  樓門(らうもん)額(かく)【額図「若一王子宮」】仁和寺(にんわし)覚深(かくしん)法親王(ほふしんわう)眞蹟(しんせき)  當社(たうしや)はすへて紀州(きしう)熊野山(くまのさん)地勢(ちせい)を寫(うつ)し前(まへ)に音無川(おとなしかは)の流(なかれ)をうけて 【左丁】  風色(ふうしよく)真妙(しんみやう)なり花(はな)の時(とき)は花をもて祀(まつる)といへる神慮(かみこゝろ)に因(よる)にや社頭(しやたう)に  多(おほ)く桜樹(さくら)を植(うへ)て春(はる)の頃(ころ)は境内(けいたい)殊(こと)に観賞(くはんしやう)あまりあり亦(また)冬月(とうけつ)雪(ゆき)の眺(てう)  望(はう)も他(た)に勝(すくれ)たり 王子(わうし)稲荷社(いなりのやしろ) 同北の方にあり往古(いにしへ)は岸稲荷(きしいなり)と号(なつけ)しにや今(いま)當社(たうしや)より出すと  ころの牛黄(こわう)宝印(はうゐん)にしか記せり  本殿(ほんてん) 倉稲魂(うかのみたま)命《割書:聖観世音(しやうくはんせをん) 薬師(やくし)如来(によらい)|陀枳尼天(たきにてん)》 本宮(ほんくう) 十一面(しふいちめん)観世音(くはんせをん)  王子(わうし)権現(こんけん)縁起(えんきに)曰(いはく)いつれの世にかありけん此社(このやしろ)の傍(かたはら)に稲荷(いなり)明神(みやうしん)をうつ  しいはいけれは毎年(としこと)臘晦(おほつこもり)の夜(よ)諸方(しよはう)の命婦(みやうふ)此社(このやしろ)へ集(あつま)り來(きた)る其(その)ともせる  火(ひ)の連(つらな)りつゝける事(こと)そくはくの松明(まつ)を並(なら)ふるか如(こと)く數解(すこく)の蛍(ほたる)を放(はなち)  飛(とは)しむるに似(に)たり其(その)道(みち)野山(のやま)を通(かよ)ひ河辺(かはへ)をかよへる不同(ふとう)を見(み)て明年(あくるとし)の  豊凶(ほうきよう)を知(し)ると聞(きこ)ゆ命婦(みやうふ)の色(いろ)の白(しろき)と九(こゝのつ)の尾(お)あるは奇瑞(きすい)のものなりと  古(ふる)き書(ふみ)にありとなむ《割書:下畧|》   《割書:因(ちなみ)云 今(いま)の世(よ)三狐神(みけつのしん)の名(な)に附會(ふくはい)して伊奈利(いなり)を白狐(ひやつこ)とするものは大(おほひ)なる誤(あやまり)りなり又|狐(きつね)を伊奈利(いなり)の使者(ししや)とし又こゝに命婦(みやうふ)といへるは或書(あるふみ)に云(いはく)後小松帝(ここまつてい)の明德(めいとく)年中》