翻刻
【右丁】
肝要(かんよう)なりかくして十余日を経(ふ)れば糠(ぬか)よくなれて故(ふる)き
糠味噌(ぬかみそ)に異(こと)なることなし又なれたる糠みそを少(すこし)にても
種(たね)にいるれば尤(もつとも)はやく新糠(しんぬか)の匂(にほ)ひうぜるもの也ことさら
新(あたら)しきうちはかんさまししたみ酒(ざけ)醤油(せうゆ)のおりなどあらば
いれてかきまわすべし味噌漬(みそづけ)のみそ又/粕漬(かすづけ)のかすなど
むざと捨(すて)ずして万事(ばんじ)心がけて捨(すた)らぬやうにぬかづけの
中へいれべし三十日ならずして年(とし)久(ひさ)しくたしなみたる
ぬかみそにかわる事なし時々(とき〳〵)の物(もの)をつけて其(その)あぢわひを
こゝろむべし
【左丁】
大根/味噌漬(みそづけ)
甘塩(あましほ)にして漬(つけ)たる沢庵(たくあん)大根を能(よく)洗(あら)ひ水気(みづけ)を布巾(ふきん)
にて拭(ぬぐ)ひとり二時(ふたとき)斗(ばか)り陰干(かげぼし)にしてたまりがちなる
味噌(みそ)につけるなり一年(いちねん)立(たち)て又/洗(あら)ひ別(べつ)のみそに漬(つけ)
おけば何年(なんねん)立(たち)ても其(その)味(あぢわ)ひかわることなし常々(つね〴〵)遣(つか)ふ
小出(こだ)しの味噌桶(みそおけ)の底(そこ)に入(いれ)置(おく)もよし
奈良漬瓜(ならづけうり)
夏(なつ)土用(どよう)の中(うち)の極上物(ごくじやうもの)の白瓜(しろうり)を吟味(きんみ)して二ッに割(わり)て
中実(なかど)を深(ふか)くとり瓜(うり)の肉(にく)にきずのつかぬやう取扱(とりあつか)ひ