翻刻
出し持出す間にはや火の手雨のことく家財一品も出さす丸焼に成
しとなん此時に大久保彦左衛門殿自筆の壱軸焼失と承りぬ
殊に残りおしき事也
○役寄合高千五百石 右同所伏屋七之助殿此夜賀儀有之
家士互に酒を呑せ其身も相伏たる所俄の震動(しんとう)にて屋敷潰れ
当主家士共八人即死屋敷ハ残りなく焼失なり
○役寄合高三千五百石同所佐藤金之丞殿同組頭用事ニ付彼
方へ参られ帰宅有て座敷へ入上下を解んとする時右地震にて
屋敷崩落主従三人即死表長屋三人女部屋待部やにて六人即死
中間へやより出火にて残らす焼失
○当時御老中十月五日迄平勤十万石西丸下堀田備中守殿
小川町在住の節地震にて屋敷悉く潰れ当主崩家の下
にならる其時陸尺傳藏平右衛門といふ者両人駆来り家根瓦
を取り除け漸救ひ出したりまた侯(こう)僅(わつか)に足を怪我致され
けれ共其侭登 城有之尤此夜者御用召御内見故奥表共
御用書物調にて灯火炭火等も澤山に有之ゆへ直に出火と
なり当主留守中に屋敷不残焼失事凌て後右陸尺傳藏
平右衛門二百石宛被下無役の者ニ被召出しとなん
○小川町定火消組屋敷当時御頭無之手明組也右組同心
鳶人足共三十八人即死怪我人百余人其上屋しき不残類焼