翻刻
もとなく思ひ居候処九月中旬比ゟ毎日之
北風吹冬のことく有之候間粟おどけ少も
実のり不申中北風之大風吹其上右之
大霜故粟とては一統少も無之候例年粟
六七十表も取候百姓が漸粟ぬか弐表計も
取候是とても少も本の実は無之当年之難
渋は九州にかきらす日本国中一統の大飢
饉にて町方百姓朝夕之給物粟ぬか欅のみ
其外木の皮種〻手をつくし扨〻前代
未聞の悪年にて御坐候
一同午年十月十三日晩山鹿上町ニ出火有之
八竈焼失仕候
一天明七年未ノ正月ニ相成候へは去秋の不作より
諸穀高直ニ成り
同正月 米壱表代山鹿五拾壱匁 熊本五拾三匁弐分 大麦廿五匁
粟三拾五匁《割書:小麦|はたケ》三拾四五匁 空豆 廿五匁
大小豆廿八匁 わた壱斤十一匁
一同未年二月八日晩小田手家伊倉村法印所ニ押入
盗賊家財不残盗取候由尤家内ニ入候人数九人と
の噂有之候畢竟無並悪敷上下因る躬故歟所〻
盗難た事ニて扨〻油断ならさる事共也