翻刻
食事も少々宛給大小便の通ひも自由ニて
何そ格別悪敷気分とも見へされとも中村
之娘を呼介抱しけるに同七日未明比茶を
望みにぎり飯を少シ給小便にゆかんとて縁
端に這出 言(モノ)云なから臨終となり寔には
かなき事は此界の習ひなから餘りの事に
爰に記夫より五七の忘日ニ当れぞ剃髪の
志しきりなれぞ押而白髪をおとし其頭
をなで見る事時節の到来歟又は祖母(ばゝ)の
帰相の御引立歟とかなしさ嬉しさ底意
は明ケて云はかりなければ燈辺ニて即興
爰に記す
竹馬破魔弓の昔を思へば其齢
はるかなから若葉散り葉のかず
重なりていろ〳〵か云う六十(ムツ)七ツの齢ひに
かたむきさあれ今年寛政四ツ子ノ
仲冬中の二日は先立し亡女の
五七の亡日にあたれぞ彼の国か此
縁となりてや気か白髪を落シ最早
此界の縄張をぬくれば何一物を
なき身なれば
梅鳥見れば 種子瓢
さわるもの なき
向見の人の笑ひのたねと爰に記