みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE3

安政見聞誌 上 - 翻刻

安政見聞誌 上 - ページ 8

ページ: 8

翻刻

京橋の北方(きた)南傳馬町三丁目の十字街(よつつぢ)の角々四|軒(けん)の商家(あきうと)皆(みな)土蔵|作(つく)り也。此|故(ゆゑ)に字して。京橋の四方蔵(しはうくら)と云(いへ)り。此辺(このあたり)祝融(ひのかみ)の災(わさわい)ありても。此土蔵火を防(ふせ)くの助と成(なる)により。隣(となり)の人の為にもよき宝(たから)なりといひあへるを。祝融(ひのかみ)常(つね)に嫉(ねた)ましとや思へる。此度(こたび)地(ぢ)震(しん)の神と心を合せ。棟(むね)を傾(かたむ)け瓦(かわら)を落(おと)し壁(かへ)を崩し炎々(えんえん)と火(ひ)を延(ひ)き。見る間に恢燼(くわいしん)となせり。嗚呼(ああ)惜(をし)むべし街(ちまた)の美観(びくわん)一時に烟となりぬることを。そも地震|祝融(ひのかみ)等(たち)の禍日(まかつひ)の神何そ如此(のごとく)悪行をなすや予此春四方蔵の家名(いへな)堤山|崎(さき)太刀伊 勢屋|堺(さかい)屋の四ツを題(だい)にて戯(たわぶ)れに淀(よど)ならぬ堤も春のたち      いせやとしの   さかひや   かすむ      山崎とよめりしも今その家を見てその蔵なきを歎息(たんそく)すしかしながらむさし野の広(ひろ)き御恵の露(つゆ)は民艸(たみくさ)のすゑ葉までもらさす潤し給へれば再ひ普請成就して繁栄(はんえい)はじめに百|倍(ばい)すへしと        いふ      一登齋                芳綱画