翻刻
いとなみニ三日かほどは家の内に寝る人なく或は大寺の境
内にうつり或は洛外の川原へうつり西なる野辺につど
ひて夜をあかしけるかくて三日四日過ても猶其名残
の小さき震ひ時々ありてはしめは昼夜に二十度も
有しか次第にしづまりて七八度ばかり三四度になる事
もあり然れどもけふ既に廿日あまりを経ぬれどなほ
折々すこしツヽの震ひもやまて皆人々のまどひ恐るゝ
ことなり世の《ルビ:諺|コトハザ》に地震ははじめきびしく大風は中程
つよく雷は末ほど甚しといへる事をもてはしめの程の
大震はなきことゝさとしぬれとなほ婦女子小児の
たぐひはいかゞとあんじわづらひていかにや〳〵と尋
ねとふ人のさはなれは旧記をしるして大震の後小
震ありて《ルビ:止|ヤマ》ざるためしを《ルビ:挙|アゲ》て人のこゝろをやすく
せんと左にしるし伝る
上古より地震のありし事国史に見えたる限りは類
聚国史一百七十一の巻《ルビ:災異|サイイ》の部挙て《ルビ:詳|ツマビラカ》なり