翻刻
恥(はぢ)をあたへしとかや。爰(こゝ)をおもへば。人(ひと)の身(み)の。立(りつ)
身(しん)するも。困窮(こんきう)するも。美目(みめ)のよしあし。鼻(はな)の
凸凹(たかびく)によらぬ事(こと)にて。只(たゞ)心(こゝろ)のよしあしに寄(よる)
ことなれば。汝(なんぢ)も今日(こんにち)より。姿(すがた)をつくり。みがく
事(こと)を止(やめ)て。心(こゝろ)を清(きよ)くみがくべし。心(こゝろ)を大事(だいじ)と。
みがく時(とき)は。世(よ)の人(ひと)。汝(なんぢ)が心(こゝろ)の清(きよ)きをみて。鼻(はな)の
凹(ひく)きを見ざるべし。姿(なり)形(かたち)をみがく時(とき)は。世(よ)の
人(ひと)汝(なんぢ)が。なりかたちを見て。鼻(はな)の凹(ひく)きを。あさ
けり。心(こゝろ)のおろかに。つたなきを。悪(にく)み笑(わら)ふべし。
今(いま)汝(なんぢ)が。鼻(はな)の上(うへ)へ。よき鼻(はな)を打出(うちだ)して。あたふれ
ども。汝(なんぢ)は。返(かへつ)て顔(かほ)をしかめ。引(ひき)つり引(ひつ)ぱるやうで
くるしく。又(また)見(み)ともなきといふにあらずや。是(これ)にて
万事(ばんじ)を考(かんが)ふべし。古哥(こか)にも
浮世(うきよ)にはかゝれとてこそ生(うま)れけめ
ことはりしらぬ我(わが)なみだかな
浮世(うきよ)には。鼻(はな)が凹(ひく)く生(うま)れたひとて。鼻(はな)が凹(ひく)く生(うま)れ