翻刻
第六 思(おも)ふ中(なか)は腎虚(じんきよ)の病(やま)ひ鹿(しか)のやりくりは思(おも)ひの種(さま)
亡者(もうじや)のおすべりは出家(しゆつけ)の喰(くひ)もの庄屋(しやうや)の生針(いきばり)はつかへの妙薬(めうやく)
第七 長崎(ながさき)医者(ゐしや)薬(くすり)の仕かけ
一夜(いちや)の内(うち)は夢(ゆめ)か現(うつヽ)かおぼへられぬ味(あぢ)あり
第八 紀念(かたみ)の後家(ごけ)の喜(よろこ)び坊主(ばうず)のすヽめに味(あぢ)をさとる女
寺(てら)をひらきしはからかさ一本(いつぽん)の持(もち)もの
第九 この手柏(てがしわ)の二女(にぢよ)ぐるひは思(おも)ひもうけぬさいはひ
姉(あね)と妹(いもと)のかたみ替(がは)り表(おもて)の亠面(めん)にかはる情(なさけ)のかくし裏(うら)
第十 生(いき)ながら畜生道(ちくしやうだう)をしたふ女
道(みち)も世間(せけん)も忘(わす)れはてた迷(まよ)ひの宿業(しゆくごう)
第十一 月影(つきかげ)にとりちがへたる牙(きば)のやみつき
両度(りやうど)の人(ひと)たがひは思(おも)はぬかたにあやまちの高名(かうめう)
第十二 /九十九夜(くじうくよさ)の/車(くるま)に/寄(よ)る/輪廻(りんゑ)のきづなは/絶食(ぜつしょく)のくはせ/物(もの)
とう〳〵/恋(こひ)になりすまいた /作病(さくびやう)
第十三 /見(み)るは/目(め)の/毒垣間見(どくかいまみ)の/生物見事(なまものみごと)に/過(すぎ)たるは/食客(しょくかく)の御/道具(どうぐ)
/乱(みだ)れかゝる/若後家(わかごけ)男の/心(こころ)をひいて/見(み)る/秋荻(あきおぎ)のうた/占(うら)
第十四 /血気(けつき)の/腰(こし)の/物(もの)はきたへにきたへし/六寸胴(ろくすんどう)がへし
/姪(めい)女の/身替(みがは)りに/立奧(たつおく)づとめの/伯母(おば)
第十五 /猛(たけ)き/心(こころ)をもやわらぐる/歌(うた)の/徳(とく)は/膳輩(げぐ)の/知(し)らぬ事
ましてや/是(これ)は三てうの/傳(でん)に/主従(しう〴〵)かけてにい/枕(まくら)
以上十五回目録終
淫水亭 恋川笑山編集
/清水通夜物語(きよみづつやものがたり)初篇上之巻
/一夜(いちや)にかぎる/嫁入年(よめいりとし)は十八たわけは/天下一(てんかいち)
/再度(さいど)の/縁(えん)は/古長持(ふるながもち)に三百/両(りやう)の/附札(つけふだ)
/中秋(ちうしう)の/月(つき)あかき/夜(よ)に/月夜烏(つきよがらす)の/声(こゑ)かしましく/心耳(しんに)を/澄(すま)せる/清水(きよみづ)に
/通夜信心(つやしん〴〵)の/輩懺悔(ともがらざんげ)のためとて/先(まづ)としごろ/六(む)そぢばかりの人/語(かた)られ
けるは/世間(せけん)ひろしといへとも/浮世(うきよ)に/又(また)たぐひあるまじき/珍事両度(ちんじりやうど)まで
ありけることを/語(かた)り申すべし/其生国(そのしやうこく)は/駿河(するが)の/者(もの)なり/親(おや)は/人並(ひとなみ)
の/百姓(ひやくしやう)にて/兄(あに)は/外(ほか)に/家(いえ)を/持(もた)せ/我(われ)は/親(おや)と/一所(いつしよ)にかせぎし/内(うち)に/父(ちゝ)には
おくれ/母(はゝ)ばかりになりて/身上(しんしやう)も/次第(しだい)〳〵におとろへ/手元(てもと)とてもよろし
からずかゝりし/所(ところ)に/隣郷(りんごう)に/手前能者娘(てまへよきものむすめ)をひとり/持(もて)りしなかたちは
十人/並(なみ)に/勝(すぐ)れて/能(よき)きりやうなれども/心(こゝろ)大だわけなりと/云(いひ)ふらし