翻刻!草双紙の世界

コレクション: @chinjuさんと読む草双紙

竜宮苦界玉手箱 : 3巻 - 翻刻

竜宮苦界玉手箱 : 3巻 - ページ 3

ページ: 3

翻刻

浪(なみ)に女男(めを)の称(せう)あり。魚(うを)に西施(せいし)の名(な)あり。那(なん)ぞ竜宮(りうぐう)に 花街(くるは)なからん。酒(はまつ)て【洒て?】通(かよ)ふ実(まこと)の渕(ふち)。深(ふか)ひ浅(あさ)ひの虚(うそ)の川。 乙姫(おとひめ)が煙草(たばこ)の付指(つけざし)は竜王(りうわう)の匂(にほ)ひ高(たか)く。浦島(うらしま)が風流(ふうりう)の 買論(かいろん)は。釣竿(つりさほ)のはり強(つよ)し。迷(まよ)へば則(すなはち)海坊主(うみぼうず)も忽(たちまち)堕落(たらく)し。 悟(さと)るときは人魚(にんぎよ)の嬌(かほよき)【ヵ】 も終(つい)に干物(ひもの)となる。辛苦(しんく)しんきの 蜃気楼(しんきろう)。算(かぞ)へて暮(く)らす月日貝(つきひがい)。明て悔(くや)しき玉手箱(たまてばこ)も 唯(たゞ)十年の劬界(くがい)に衰(おとろ)へ。誘(さそ)ふ水(みづ) 俟(まつ)流(なが)れの果(はて)。浜(はま)の砂子(まさご)を 書寄(かきよせ)し硯(すゞり)の海(うみ)の水澪木(みほつくし)。筆(ふで)に浅瀬(あさせ)を識(しる)す事しかり。  時に寛政 九界(くがい)の湊(みなと)しるも丁(ひのと)の巳価金(みのしろきん)   浦島太郎月 釣竿(つりさほ)の長き日              馬琴述 【寛政の丁巳年は九年】