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【表題】
自身除妙法(じしんよけのめうほう)
【本文 上】
安政二年十月二日夜
江戸幷関東筋大地震
大火に付
鹿島大明神託曰
〽其方共義前ゝ
【よ】り申|聞(きか)せおく通り
此娑婆(しやば)せかいのうち
大日本国中の地の上は天照
大神其外諸神の御|守護(しゆご)
にして地の下は金輪(こんりん)ならくえんま王
の住所迠|堅牢(けんろう)地神とそれがしの
あづかる所也しかるに例年(れいねん)のことにして朔日
より出雲大社へ参りいるるすの中(うち)を見こみ
其方共|平常(へいせい)の戒(いましめ)をわすれ乱行(らんげう)いたし御|府内(ふない)
近国に至迄|揺潰(ゆりつぶし)家倉(いへくら)石垣其外を崩(くづ)し其上
出火と成数ヶ所の焼失(せうしつ)のみならずけが人|尚(なを)又一命に及(およぶ)
もの甚多きよし是皆其方共かねてのいましめを
やぶりたる大ざい也いかに某(それがし)るすのうちとてもかくのごとき
異変(いへん)ありては某の守護役(しゆごやく)のかど立がたく我をないがし
ろするふらち一人も其まゝさし置がたしへんとう有やとふかく
いかりをあらはし仰けるに一とうのなまづは身ぶるひして大いにおそれ
一言をはくものなく此ときかしら立たると見ゆるもの慎(つゝし)んで申す
〽おそれながら仰のおもむきかしこまり候也此たび大へんのことは
一とふり御きゝ遊され下さるべし此義は申上ずとも御存の義にて
はるなつあきふゆのうちにあついじぶんにさむい日あり
さむいときにあたゝかなる日ありかくのごとく気候のくるひ
有てかんだんの順(じゆん)なるとしは【少】(すくな)く候今年|最(もつとも)ふじゆん
ながら五穀(ごこく)のよくみのり候は八百万神の御守り遊され候
御力による所也さて天地にかんだんの順のさだまり
ありてはるなつと其きのじかうことの外くるい候ゆへ
わたくしとも地下(くに)のすまひにては以の外おもしろき
じせつになりたりとわきまへなきものどもらん
しんのごとくくるひまはり候ゆへわたくしども
いろ〳〵せいとうをいたせどもみゝにもかけず
らんぼうにくるひさはぎ候よりつひに思ひよら
ざる日本へひゞき御しはいの内なる家倉
をそんじ候だんいかなるつみにおこなはる
共いはいこれなく候也され共わけてお願
事はわたくしどものこりなく御かりつくし候共
そんじたるいへくらのたつにもあらねばまづ
しばらくの命を御あづけ下され是より
日本のとちをまもりいかなるじかう
ちがひにても此たびのごときことはもう
とう仕らず天下たいへいごこくほう
ねん君が代をまもり奉り候べしと
とうにねがひけるゆへ御ゆるし有て
【い】づれもかへされけりそれにつき
【ぢ】しんをよける御まもりはむかしより
【これあ】りといへども又下にあらはし置候
【本文 下】
それ地しんは五ヶ国十ヶ国もゆるものにて
そのいへばかりのがるゝといふことなしされど
かしま御神の御色居をはじめ其|御領(ごれう)
ぶんの内にすむ家あまたありて
むかしより地しんにてわざわひある
ことをきかず今左にしるす
【梵字1】?(東方)【梵字2】?(西方)【梵字3】?(西方)【梵字4】?(南方)《割書:四方へ|はる也》
【梵字5】?《割書:家の中なる|てん上にはる》又守に入者へかける也
右の守はたとひぢしん有ても
此家ばかりはさはり有ことなし
万化宝(まんくわほう)といふ本を見るべし此ことを
信(しん)じて用(もち)ひたる家は何ごとなく
あざけりたるものはゆりつぶれ
たることあきらかに書たり
されば是も世の心得にならんと
こゝにしるしはべりうたがふ
人はさしおき此守を信じて
いらい地しんのなんを
のがれ給はゝ幸(さいはい)此上
なしと申のみ