翻刻
鶏口
牛後
晋米齋
玉粒作
歌川
美丸画
戊辰春新䥴
化物(ばけもの)
世帯(せたい)
気質(かたぎ)
化物(ばけもの)の冊子(さうし)を編(つゞら)んとて。硯(すゞり)の海坊主(うみばうず)に河童(かつぱ)の皿(さら)の水(みづ)を
滴(たら)し。烏羽玉(うばたま)の墨(すみ)を點(てん)じ。舌出(しただ)し禿(かぶろ)の筆(ふで)採(とり)て。工夫(くふう)も
更(ふく)る丑満過(うしみつすぎ)。物凄(ものすさま)じき秋(あき)の夜(よ)の。生臭(なまぐさ)き風(かぜ)北窓(まど)におと
づれ。狐火(きつねび)ほそく遠寺(えんじ)の鐘(かね)。コウ〳〵たる鼾(いびき)に人音(ひとおと)絶(たえ)て。
気(き)の利(きゝ)たる化(ばけ)ものは。足(あし)を洗(あら)ふて居(ゐ)る時刻(じぶん)。幻(まぼろし)のごとく
物蔭(ものかげ)にさゝやく咄(はなし)の聞(きこ)ゆるに。首筋(くびすぢ)もとからぞゝぞつと。
怖(こわ)いもの見たしと耳(みゝ)聳(そはだつ)れば。化物(ばけもの)の首長(かしらぶん)未然(みぜん)を見
越(こ)す大入道(おほにふだう)。女房(にようばう)の雪女(ゆきをんな)に向(むか)ひ。《割書:アノ》かゝァどの《割書:コレ》お雪(ゆき)や。此(この)
頃(ごろ)きけば今(いま)金時(きんとき)といふつよいやつが出(で)て。又(また)此節(このせつ)の新(しん)
化(ばけ)を退治(たいぢ)するとの噂(うはさ)。《割書:イヤモウ》前(まへ)の金時先生(きんときせんせい)におさ〳〵
劣(おと)らぬ兵(つはもの)のよし。ひどき目(め)にあふて消(きえ)てなくなるも