翻刻
分(わけ)て|近年(ちかごろ)|寺方(てらがた)みれば。|清僧上人(せいさうしやうにん)|勿体(もったい)
らしく。赤(あか)き衣(ころも)は|白粉(おしろい)くさく。光(ひか)る|御袈裟(おけさ)は
|刺身(さしみ)の香(か)ほり。尼(あま)の|三衣(さんえ)は|子持(こもち)のにほひ。
朝(あさ)の勤(つとめ)は|御小僧(おこざう)ばかり。夜(よる)の勤(つとめ)は鉦(かね)うつのみで
酒(さけ)と|掛碁(かけご)て|寺役(じやく)におくれ。|居間(いま)の柱(はしら)の
|状刺(じやうさし)みれば。様(さま)は為?(まるざま)御(こ)ぞんじよりと。紅(べに)のつい
たる|仮名文(かなぶみ)見ゆる。|法座(ほうざ)|仕舞(しまひ)の咄(はなし)をきくに。
|今度(こんど)|供養(くよう)は|時節(じせつ)がわるい。|参詣(まゐり)|不足(ふそく)で
儲(もうけ)がないと。|供養(くよう)|仏事(ぶつじ)を商(あきな)ひらしく。|後生(ごしょう)知(し)ら
ずの|邪見(じゃけん)なものも。金(かね)を上(あぐ)れば|信心者(しん〴〵しや)とて。
|住持(ぢうぢ)|寺内(ぢない)のあしらひ別(べつ)よ。いかに|信心(しん〴〵)|堅固(けんご)
の人(ひと)も。|旦家(だんか)|役金(やくぎん)ぶさたをすると。|葬礼(さうれい)
おさへる|宗判(しうはん)やめる。左(そ)して|近年(きんねん)|御談義(おだんぎ)
さへも。|潮来(いたこ)|長唄(ながうた)|新内(しんない)などを。雑(まぜ)て語(かた)ら