翻刻
しらぬ病(やまひ)を|呑込(のみこみ)がほに。やがて治(なお)ると薬(くすり)を
のませ。少(すこ)し|容躰(ようだい)わるひと見れば。人に譲(ゆず)り
て己ははづし。匕(さじ)のさきより|口先(くちさき)上手(じやうず)|素人(しろと)
だましの|手柄(てがら)を咄(はな)し。|金匱要略傷寒論(きんきよううりやくしやうかんろん)
は若(わか)い|時分(じぶん)に習(なら)ふたばかり。偶(たま)に|取出(とりだ)し披(ひら)ひて
見れば。闇(やみ)の烏(からす)で分(わか)らぬゆゑに。利(きか)ず障(さわ)ら
ぬ薬(くすり)の数(かず)を。たんと呑(のま)せて|衣裳(いしやう)をかざり。
礼(れい)の|多少(たしやう)で|代脈(たいみやく)つかひ。|裏家(うらや)|背戸家(せどや)は
|十日(とをか)に|一度(いちど)。金(かね)になるのは|毎日|四五度(しごど)。されば
|医者衆(ゐしやしゆ)の掟(おきて)をきけば。銭(ぜに)や金(かね)にはかかはる
まじき。人(ひと)を救(すく)ふが教(をしえ)のもとよ。常(つね)のいましめ
まもらぬ訳(わけ)は。欲(よく)がふかひか|文盲(もんまう)ゆゑか。按(あん)
摩とのまで夫(それ)|見習(みなら)ふて。近(ちか)い頃(ころ)まで|上下(かみしも)
揉(も)んで。|弐十四文(にじうしもん)が通用(つうよう)なるに。いつの頃(ころ)