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コレクション: STAGE5

安政見聞録 中 - 翻刻

安政見聞録 中 - ページ 22

ページ: 22

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三(み)たび《?:冝(うべ)》なるかなこの大木揺(たいぼくゆ)れて。伏(ふ)すときは枝地上(えだちうしやう)に著(つ)き。仰(あふ)ぐ ときは半天(なかぞら)に至(いた)る。故(ゆへ)に過(あやまつ)てこの幹(みき)に打(うた)るれば。身體微塵(しんたいみぢん)に成(なる) ばかり。その危(あや)ふさ譬(たと)ふるにものなし。然るに高運(かううん)にして。その恙(つゝが)な きことを得(え)たり。直(たゞち)に地上(ちしやう)に轉(まろ)びしものは。さらに起上(おきあが)ること協(かな)はず。 當下大地大(そのときたいちおほい)に裂(さけ)て。淤泥沙(どろすな)をふき出(いだ)せば。遍身泥(へんしんどろ)に塗(まみ)れて面(めん) 目(もく)を分(わか)たず。震止(しんや)みてやう〳〵に。起上るといふといへども。たゞ|眩暈(めくるめき)て 行歩(ぎやうぶ)かなはず。大(おほい)に酔(ゑゝ)る人のごとし。然(しか)るにおよそ半時ばかりにして。また 揺返(ゆりかへ)しの来ること。初(はじ)めに競(くら)ぶればやゝ|緩柔(ゆる)し。夫(それ)より時〻刻〻(じゞこく〳〵) に。震(ふる)ふこと数(かず)を知(し)らず。因(よつ)ておもふに江都の地震(ぢしん)。さしも猛烈(まうれつ) 《?:な》りといへど。駿府(すんふ)の地震を十分(じふぶ)とするときは。七分(しちぶ)ばかりにや當(あたり) 《?:ぬら》ん。いと怖(おそろ)しきことなりと語(かた)りき     〇地震(ぢしん)の方角(はうがく)をいふ条(くだり) 《?:凡(およ)そ地》震する時にあたり。或(ある)ひは東(ひがし)より震来(ゆりきた)るといひまた西(にし)より 来(きた)るといふ。南北(なんぼく)もまた然(しか)り。さればその起(おこ)る所(ところ)。何方(いづこ)ならんとおもひ 慮(はか)るに。雷(らい)のごとく山より発(はつ)して。里(さと)を轟(とゞろ)かすものにはあらず。古書(こしよ)に云(いは)く。 地球一周九萬里(ちきういつしうくまんり)也。と是唐土(これもろこし)の説(せつ)なれば。六町をもて一|里(り)となすな るべし。是を日本(にほん)の一里三十六|町(ちやう)にして。一周(いつしう)一|萬(まん)五千里となる。されば其(その) 地心より地上まで。二千五百里に當(あた)るなり然るに和漢古今(わかんこゝん)の地震。いと 尤(けや)けき者といへども。その響(ひゞき)の応(おう)ずる所。大|抵(てい)二百|里四方(りよはう)に過(すぎ)ず。這回江都(このたびえど) の地震などは。百里|四方(よほう)にも至(いた)れる歟(か)。この広(くわう)大なる地|球(きう)に於(おい)て。この微(び) 少(せう)なる地動(ちどう)のごとき。東西南北(とうざいなんぼく)より来るにあらず。震(しん)する所本(ところもと)ありて。夫(それ) より四方(しはう)へ《?:響(ひび)かせ》ゆき。その微動(びどう)の所(ところ)を末(すゑ)とす。今|試(こゝろ)みに次(つぎ)に図(づ)す