翻刻
《?:こ》れ《?:地(ち)》 球(きう)にて周迴(しうくわい)凡(およ)そ一万五千里とすこの地心とある所より上
までを二千五百里とす
この黒点(こくてん)の間(あひだ)
凡(およ)そ一千五百里
この小円(せうゑん)凡(およ)そ 地心
二百里|四方(よはう)に
あたる
《?:右》に図(づ)するごとく。二百里|四方(よはう)を轟(とゞろ)かす大震(たいしん)は。和漢(わかん)古今(こゝん)にありや
なしや。その大震だに斯のごとし。況やその微(び)なるに於(おい)てをや。前にもいふ
ごとく。その地に起(おこ)り。それより四方(よはう)へ響(ひゞ)かする《?:れば》 。来れる方角(はうがく)のある
ことなし。但(たゞし)その心(しん)は強(つよ)く。その端は次第(しだい)に緩(ゆる)し。思(おも)ふに今般(このたび)江都の地
震は。江都を心(しん)となすが如し。その中(うち)にても浅草(あさくさ)より。本所(ほんじょ)深川(ふかかは)を心(しん)
となし。山の手のかた市谷(いちがや)牛込(うしごみ)。大窪(おほくほ)の辺(ほと)りを端(はし)とす。江都(えど)は元(もと)地(ぢ)
震|稀(まれ)にて。元禄(げんろく)十六年の大震(たいしん)より。百六十年ばかりを経(へ)たれば。知れ
る人さらになく。言伝(いひつた)へをだに知るもの寡(すくな)し。ただ繁華(はんくわ)の地なるにより。火(くわ)
災(さい)は往古(わうご)より度〻(たひ〴〵)あり。因(よつ)て火を防(ふせ)ぐの備(そな)へをば。人〻|厳重(げんちう)に心(こゝろ)を籠(こむ)れ
ど。地震(ぢしん)のことには心を用(もち)ひず。因(よつ)て這回(このたび)の天災(てんさい)に。死亡(しばう)の者(もの)も多(おほ)しとか
聞(き)く。是(これ)より以来(いらい)心(こゝろ)ある人。家作(かさく)及(およ)び住居(ぢうきょ)の地。よく択(えら)ぶこと肝要(かんえう)ならん
安政見《?:聞録》巻之中終