翻刻!地震・災害史料

コレクション: NDL地震・火山

地災撮要. 巻7-9(地震之部) - 翻刻

地災撮要. 巻7-9(地震之部) - ページ 17

ページ: 17

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 れは胡梯踊りて下る事ならす狼狽してまろひ落れは巨材其上に  堕重り壓になりて五体をひしぎ或は棟梁の間に挟れて自在を得す  號へども援る人なく呼とも尚答ふるものなし瞬目(シユンモク)の頃潰たる家々より  火燃起りて焔勢其身に迫る適迯れ出たるも途方を失ひ烟にむせび  て道路に倒れ息絶るもあり家傾し迄にて顛倒に及はさるは僅に四 肢(シ)  を全ふして脱るもあれと資財雑具は皆悉く灰烬となしつ固より利にわ【「は」の誤記と思われる】  しる廓のならひなれば財宝に心奪れ強て運ひ出んとしては亦猛火に  閉られて命を傷も多し此火五街に延漫し娼廓悉く焼けて阿房一  片の烟と立登りぬ凡今夜此里に遊ひし騒人【さわぎびと=遊里や芝居小屋などに出入りしてにぎやかに遊び騒ぐ人】飄客【ひょうかく=花柳界に遊ぶ男の客。芸者買いをする男】この妖孼(ワザハヒ)に罹りて  或は横死し或は重き疵をかふむる匍匐【ほふく=腹ばいになって進むこと】して堤にさまよひたま〳〵無難  にして落のひたるも刀を措き衣服を失ひあらぬさまして其侭家に帰り  かたく辛ふして知者の家にいたれはこゝも潰れてやすらふ事さへなりか  たくと忍ひてかへりしもありとか聞りまして廓の人々此夜の窮厄金銀財  宝【「室」に見えるが、「宝」の誤記と思われる】数を尽して失ぬる事いくばくにかありけん痛むへく歎くへく何そ  毛頴をもて委曲に演る事を得んや 〇仝時浅草寺地中北谷より出火又田町壱丁目と仝弐丁目よりも火  起りて聖天町少々同横町山の宿町《割書:山の宿は西ノ裏|手計り少々焼たり》金竜山下瓦町谷  中天王寺門前山川町《割書:斎藤門前|常音門前》猿若町三丁目弐丁目壱丁目《割書:三座|芝居》  《割書:并茶屋哥舞妓役者等の宅焼る但し壱丁目入口之所は残る森田勘弥尾上|梅幸坂東彦三郎同竹三郎市村羽左衛門中村福助故人秀佳の忰坂東吉弥》  《割書:片岡我童等か家々又茶屋二三軒|其外商家共幸にして焼残れり》去年十一月五日夜聖天町ゟ出火して  猿若町三丁花川戸町山の宿町等長六町巾平均にして壱丁十間の焼  亡なり僅に普請なりてゟ十ヶ月に足らす再やけたり北馬道町  南馬道花川戸町《割書:西側計り|やける》等類焼に及へり田町は両側の潰家且  火災にて死亡人甚多し《割書:此へ辺所々ゟ燃出たるよしなり|田町は往来人の死亡も多し》 〇花川戸町河岸の角六地蔵尊の石燈篭は希世の古物也少しも  傾く事なく全し大川橋傍橋番所潰れたり 〇真土山聖天宮無別条《割書:地震の時いつしか扉開けたり此扉十八重なりしか悉|く明きたり常は秘仏にして更に明る事なし此夜》