← 前のページ
ページ 38 / 134
次のページ →
翻刻
【右丁】
十二間程
一南本所荒井町北本所番場町焼失 凡長三町余【餘】幅平均廿五間程
一中ノ郷成就寺門前小梅町元瓦町辺焼失 凡長五十間幅平均八間程
〇十月十四日火元の町々北町 御奉行所へ御召出天災の事に付御咎之
儀に及れさる旨令せらる《割書:町方の火元三十箇所也武家を合すれは|六十余所にもこれあるへきよし也》
〇地震は甚しといへとも囚獄の辺火災これなき故石出氏より開放
の事なし《割書:牢内ゟは声ノ限り叫ひて|明けよ〳〵といひけるよし》是は市中の輩はからさるの幸
なり浅草溜は地震火災一度になりて即死する者あり又辛ふして
逃延しもありしが巷に徘徊して鑑行に及ひけるより佃島の続【續】
なる人足寄場も邏卒【らそつ=みまわりの兵卒】これをはかり固く鎖して出す事無かりし
【左丁】
由堅きはからひにこそ
〇地震の後江戸中絃哥鼓吹の声更にこれなし《割書:二月下旬にいたり|些し絃哥の声あり》
菊紅葉看の沙汰更になし殊に楓は此頃盛に染たりしか騒人【詩人】
墨客といへとも遊観の暇なし
〇料理茶屋大破に及ひ其上米客連あらされは各商ひを休む居酒
屋茶漬屋の類 糲品(レイヒン)【粗末なもの】を售ひて価【價】の賎しきは返て商ひの殖(フヘ)たるものまゝあり《割書:魚類価賎し是貨食舗の業を休みたるが多く貴人の家々|にさへ索るゝ事の尠きか故にして魚猟の幸あるにはあらすこ》
《割書:の当坐本所辺菜蔬の価甚貴く大根壱本六十文或は|七十文位也此節本所深川の辺には食店更になし》
〇玄猪の牡丹餅【陰暦の十月の亥の日、亥の刻に新穀でついた餅を食べてその年の収穫を祝う】拵る家稀也
〇幸にして米穀豊饒也故に世の中格別の息劇(サハギ)これなし