翻刻
大変を泰平にいはひ
世なをして
家もゆつたり
国もゆつたり
故人季鷹
安政二年乙卯十月丁亥二日壬辰 十月元宿
早旦下総国成田山にて見し人の話に日輪紫色しかも濃く
して宛【あたか】もきゑんじもて色どりたる様に見え人々怪しみ思ひ
しに同夜此大地震あり《割書:成田の辺は江戸よりは地震少しよはし石燈篭|の類は覆りたるよし是は故人雪旦子門人旦齋》
《割書:話ける由雪|堤子談也》
地震の少々前に洋の方に四斗樽といふものゝ大さ成光り物ありて
左右え分る一ッハ房総の方へ趣き一ッは江戸の方へ趣くと見えしか
間もなく大地震ありしとなん《割書:品川沖の御台場にて怪しみ一|大炮を放ちけるよしなり》
地震の前宮戸川御厩河岸の船頭舟にありしか巽の方より大風の
吹起るか如き音聞えてやかて両岸の家震動しける此時同し方