翻刻
此度は殊更数万人之死亡品川御台場詰之怪我人抔は
目も当られぬ次第に相聞申候中々以銘々埋葬其外法事等伺心
底兼犬馬同様に【「之」見消し】成行何共不便至極に奉存候中には一家悉
死失向も有之趣故何卒明暦度之御振合を以諸人供養之儀
増上寺始え被仰付候様仕度奉存候且又御祈願【見消し】所向へは此上
国家安穏之御祈祷抽丹誠候様被仰付可然与奉存候昨年
諸国凶変之砌も申上候処出家同様之建白与被思召候哉にて奉
恐入候得共天変地妖之儀は神佛之加護にて免れ候事共古
代ゟ例も不少事に御座候右之外可申上儀御座候得共素ゟ固陋
之愚意御取用に可相成儀にも無御座候間別段不申上候前文之次第
其儘に被差置候は神佛之忿怒死亡之者怨念にて自然此上
国家之大乱引出可申哉与甚心痛仕候に付此段申上候已上
十月 土岐豊前守
安政二乙卯年十月十九日阿部伊勢守殿え差出之写
安三正十九日 江戸ゟ礒野文鼎と申医駿府え参り候付
江都之地震之儀種々咄しいたし候うちに彼か持居候百
味覃笥の引出しきしみてあき不申釘貫を以引出
さんとするに摘み【見消し。ニ文字左に印点】の鉄物貫ケ候ても引出しは出不申
駒込辺に住ける某申医師もおなし事にてケ様
磁気満ち候季候いつれ当寒中且春に至りて病人
多くあるへしと咄し合しか地震にて怪我人等も
多く薬調合も繁多になりて右百味覃笥引出し
のいつれも滞りなくいつれも出ること前に釘貫を用
引出さんとせし引出し何のさはりも無く出る様に