翻刻
【右丁】
今はとてわするゝ草のたねをだに人の心にまかせずもがな
かへし
わすれ草うぶとだにきく物ならは思ひけりとはしりもしなまし
また〳〵。ありしよりげにいひかはして。をとこ
《割書:新古今》わするらんと思ふ心のうたがひにありしよりげに物ぞかなしき
かへし
《割書:同》なかぞらに立ゐる雲のあともなく身のはかなくも成にける哉
とはいひけれど。をのが世々に成ければ。うとく成にけり
廿二【丸で囲む】昔。はかなくてたえにける中。猶やわすれざりけん。女のもとより
《割書:新古今》うきながら人をばえしもわすれねばかつうらみつゝなをそ恋しき
と。いへりければ。されはよといひておとこ
あひみては心ひとつを川島のみづのながれてたへじとそおもふ
とは。いひけれど。其夜いにけり。いにしへゆくさきの事共などいひて
秋の夜のちよを一よになずらへてやちよしねばやあく時のあらん
かへし
秋のよのちよを一よになせりともことばのこりて鳥やなくなん
【左丁 挿絵】