東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト 1

伊勢物語 - 翻刻

伊勢物語 - ページ 12

ページ: 12

翻刻

【右丁】   くれないににほふがうへの白菊(しらきく)はおりける人の袖かともみゆ 十九【丸で囲む】むかし。をとこ。みやづかへしける女のかたに。ごだち【御達】成ける人を。あ ひしりたりける。ほどもなくかれにけり。をなじ所なれば。女のめには 見ゆる物から。男はある物かともおもひたらず。女 《割書:古今》あま雲(ぐも)のよそにも人のなり行かさすがにめにはみゆる物から と。よめりければをとこかへし 《割書:同》あまぐものよそにのみしてふる事はわが入山のかぜはやみなり と。よめりけるを。またをとこある人となんいひける 二十【丸で囲む】むかし。男。やまとにある女を見て。よばひあひにけり扨 程(ほど)へてみや づかへする人成ければ。かへりくる道に。やよひばかりにかえでの。もみぢ の。いとをもしろきを折(おり)て。女のもとに道(みち)よりいひやる   君がためたをれる枝(えた)は春なかく【ママ】かくこそ秋(あき)のもみちしにけり とてやりたりければへんじは京にきつきてなん。もてきたりける 【左丁】   いつのまにうつろふ色のつきぬらん君が里には春なかるらじ【ママ】 廿一【丸で囲む】むかし。男。女いとかしこく思ひかはして。こと心なかりけり。さるをいか成 ことかありけん。いさゝか成事に付て。世の中をうしとおもひて。出て いなんと思ひて。かゝるうたをなんよみて物に書付ける   出ていなば心かるしといひやせん世の有さまを人はしらねば とよみをきて。出ていにけり。此女かく書をきたるをけしう心をくへ き事共覚えぬを。何によりてかかゝらんと。いといたふなきて。いづかたに もとめゆかんと。かどにいでゝ。と見。かうみ。みけれど。いづこをはかりとも おぼえざりければ。かへり入て   思ふかひなき世なりけりとし月をあだにちぎりて我やすまひし といひてながめをり   人はいさ思ひやすらん玉かづらおもかげにのみいとゞ見えつゝ 此女いと久しく有て念じわびてにやありけん。いひをこせたる