翻刻
【右丁】
行水(ゆくみつ)と過(すぐ)るよはひと散(ちる)花といづれまててふことを聞らん
あだくらべ。かたみにしける男女の。しのびありきしける事成べし
五十一【丸で囲む】むかし男人のせんざいにきくうへけるに
うへしうへは秋なき時やさかざらん花こそちらめねさへかれめや
五十二【丸で囲む】昔男有けり。人の許(もと)より。かざりちまきおこせたりける。返事(へんじ)に
あやめかり君はぬまにぞまどひける我は野に出てかるぞわひしき
とて。きじをなんやりける
五十三【丸で囲む】昔男。あひがたき女に逢(あふ)て。物語なとする程にとりのなきければ
いかでかは鳥のなくらん人しれずおもふこゝろはまだ夜ふかきに
五十四【丸で囲む】むかしをとこ。つれなかりける女に。いひやりける
行やらぬゆめぢをたとるたもとにはあまつそらなる露(つゆ)やをくらん
五十五【丸で囲む】むかし男。思ひかけたる女のえうまじう成てのよに
おもはずはありもすらめどことのはの折ふしごとにたのまるゝかな
【左丁 挿絵】