翻刻
【右丁】
のと。すだれのうちなる人の。いひけるをきゝて
《割書:拾遺》そめ川をわたらん人のいかでかはいろになるてふことのなからん
女かへし
《割書:後撰》名にしおはゞあだにそ有べきたはれ島(しま)なみのぬれ衣(きぬ)きるといふ也
六十二【丸で囲む】むかし。年ごろをとづれざりける女。心かしこくやあらざりけん。はか
なき人のことに付て。人の国なりける人に。つかはれて。もと見し人の
まへに出きて。物くわせなどしけり。よさり此有つる人給へとあるしに
いひければ。おこせたりけり。男われをしらずやとて
いにしへのにほひはいづらさくら花こけるからともなりにけるかな
といふを。いとはつかしと思ひて。いらへもせでゐたるを。などいらへもせぬと
いへは。なみだのこほるゝにめも見えず。物もいわれずといふ
これやこのわれにあふみをのかれつゝ年月ふれとまさりがほなき
といひて。きぬぬきてとらせけれど。捨(すて)てにけにけりいづちいぬらん共しらず
【左丁 挿絵】