東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト 1

伊勢物語 - 翻刻

伊勢物語 - ページ 30

ページ: 30

翻刻

【右丁】 しともおもへら【注①】ず。されど人めしげければ。えあはず。つかひざね【注②】とある人な れば。とをくもやどさず。女のねやもちかく有ければ。女人をしつめて【注③】 ねひとつ【注④】ばかりに。男のもとに来りけり。男はたねられざりければ。 と【外】のかたを見いだしてふせるに月のおぼろ成に。ちいさきわらはをさき に立て。人たてり。男いとうれしくて。わがねる所にゐて入て。ねひとつ より。うし三つまて有に。まだ何事もかたらはぬに。かへりにけり。男い とかなしくて。ねす成にけり。つとめていぶかしけれど。我人をやるへき にしあらねば。いと心許なくて待(まち)をれば。明(あけ)はなれてしはし有に女の許(もと)より詞(ことは)なくて   君やこしわれや行けんおもほえずゆめかうつゝかねてかさめてか おとこ。いといたうなきて 《割書:古今》かきくらす心のやみにまどひにきゆめうつゝとはこよひさだめよ と。よみてやりてかりに出ぬ。野にありけど。心はそらにて。こよひだに 人しづめて。いととくあはんと思ふにくにのかみ。いつきのみやのかみかけ 【注① おもへり(面へり)=「おもいあり」の約。〖ラ変〗顔つきをしている。】 【注② 使実=使いの中の主だった人。正使。】 【注③ 寝静まらせて。】 【注④ 子一ツ=子の刻は午後十一時から午前一時頃までの約二時間。一刻を四分して一ツから四ツまである。子一ツは大体午前零時頃。】 【左丁 挿絵】