東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: 学校教材発掘プロジェクト 1

伊勢物語 - 翻刻

伊勢物語 - ページ 8

ページ: 8

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【右丁】 しろくさきたり。それを見てある人のいわく。かきつばたといふ五もしを。句(く) のかみにすへて。たひの心をよめと。いひければよめる 《割書:古今》から衣(ころも)きつゝなれにしつましあれははる〳〵きぬるたびをしぞ思ふ と。よめりければ。みな人かれいゝのうへに涙(なみた)をとしてほとびにけり。行〳〵 て。するがの国にいたりぬ。うつの山にいたりて。わがいらんとする道は。いと くらふ。ほそきにつたかえではしげり。物心ほそく。すゝろなるめを見る 事とおもふに。すぎやうじや【修行者】あひたり。かゝるみちは。いかでかいまするといふ をみれは。見し人成けり。京に其人の御もとにとて。ふみかきてつく 《割書:新古今》するがなるうつの山べのうつゝにもゆめにも人にあはぬなりけり ふしの山をみれば。さ月のつごもりに。雪いとしろうふれり 《割書:同》時(とき)しらぬ山はふじのねいつとてかかのこまたらにゆきのふるらん 其山は。こゝにたとへば。ひえの山を廿ばかりかさねあけたらん程して。なりは しほじりのやうになん有ける。なを行〳〵て。むさしの国と。しもふさの国 【左丁】 との中に。いとおほきなる川有。それをすみだ川といふ。其かわのほとりに 。むれゐて思ひやれば。かぎりなくとをくもきにけるかなと。わひあへ るに。わたしもり。はやふねにのれ。日もくれぬといふに。のりてわた らんとするに。みな人物わびしくて。京に思ふ人なきにしもあらず。さる 折しも。しろき鳥の。はしとあしとあかき。しぎの大さなる。水のうへに。 あそびつゝうをゝくふ。京にはみへぬとりなれば。みな人みしらず。わたし もりにとひければ。是なんみやこ鳥とと【ママ】いふをきゝて 《割書:古今》名にしおはゞいさことゝはん都鳥わが思ふ人はありやなしやと と。よめりければ。ふねこぞりてなきにけり ㊉昔。男。むさしの国まで。まどひありきけり。扨其国にある女を。よ ばひけり。ちゝはこと人【注①】にあはせんといゝけるを。母なんあて【注②】成人に心付たり ける。父はなを人【注③】にて。母なん藤原成ける。扨なんあて成人にと思ひける。此 むこがね【注④】によみておこせたりける。住所【住む所】なんいるまの郡。みよしのゝ里成ける 【注① 異人=別の人。ほかの人。】 【注② 身分が高いこと。】 【注③ 直人=平凡な家柄の人。】 【注④ 婿の候補者】