翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

昔話稲妻表紙 - 翻刻

昔話稲妻表紙 - ページ 20

ページ: 20

翻刻

彼(かれ)あらん限(かぎ)りはいかに諌(いさめ)申すとも悪行やむべからず。根(ね)をたちて葉(は)をから すの道理(だうり)なれば。折(をり)をうかゞひ藤波(ふぢなみ)を殺(ころ)し。おのれ腹(はら)かきやぶりて死(しす)るに しかじ。科(とが)なき女(をんな)を殺(ころす)は情(なさけ)なしといへども。御家(おんいへ)にはかへがたし。越(ゑつ)の范蠡(はんれい) 西施(せいし)を呉湖(ごこ)に放(はな)ちたる例(ためし)もあるものをと。つひに心(こゝろ)を決(けつ)し。よき折(をり)も がなと思ひ居(ゐ)たるに。一夜(あるよ)時(とき)ならぬ夜嵐(よあらし)の烈(はげ)しきを幸(さいは)ひとし。身軽(みがる)に 打扮(いでたち)て奥庭(おくには)にしのび入(いり)。樹木(じゆもく)の茂(しげり)たる所(ところ)にかくれて。藤波(ふぢなみ)が部屋(へや) に下(さが)るを待(まち)居(ゐ)たり。藤波(ふちなみ)はかくとは露(つゆ)しらず。子(ね)すぐる比(ころ)殿(との)の前(まへ)を 退(しりぞ)き。ほろ酔(ゑひ)の機嫌(きげん)にて。みづから手燭(てしよく)をてらし。濃紫(こむらさき)の小袖(こそで)のつま とりあげて。長(なが)き廊架(らうか)を歩(あゆ)み来(く)る。三八郎かくと見るより氷(こほり)なす刀(かたな)を 抜(ぬき)そばめ。今(いま)を盛(さかり)に咲乱(さきみだ)れたる山吹(やまふき)躑躅(つゝじ)。早咲(はやざき)の燕子(かきつばた)花(はな)を踏(ふみ)ちらし やり水(みづ)の流(なが)れそばたちたる。庭石(にはいし)を飛越(とひこへ)て。廊架(らうか)の手(て)すりの下(した)を