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身(み)をかため。弓箭(きうせん)鎗刀(さうとう)を横(よこ)たへ。将軍(せうぐん)の御所(ごしよ)へ駆(はし)るもあれば。北条(ほうでう)が館(やかた)へ参(まい)【まいるヵ】
もあり。一時(いちじ)に鎌倉中(かまくらぢう)。上(うへ)を下(した)へと■(もん)【悶ヵ】着(ぢやく)す。こゝに頼経(よりつね)公の近仕(きんし)。太宰少(だざいのせう)
弐(に)忠重(たゞしげ)は。此(この)騒動(さうどう)を聞(きく)よりも。誰(た)が反逆(ほんぎやく)とはしらねども。将軍(せうぐん)の御所(ごしよ)こそ
大事(だいじ)なれと。甲冑(かつちう)花奢(はなやかに)行装(いでたち)。従卒(じうそつ)三十/人計(にんばかり)引具(ひきぐ)して。北条(ほうでう)が館(やかた)の
表通(おもてとほ)り。中下馬(ちうげば)の橋(はし)を駆(かけつ)て行所(ゆくところ)に。渋谷(しぶや)の一族(いちぞく)。北条亭(ほうでうてい)を固(かた)め居(ゐ)たり
しが。渋谷(しぶや)が家(いへ)の子(こ)金刺五郎(かなざしごらう)。少弐(せうに)が馬前(ばぜん)にたち塞(ふさが)り。忠重(たゞしげ)どのに於(おい)ては。
いさゝかも疑(うたか)ひ申には非(あら)ざれど。今日(こんにち)不意(ふゐ)の此(この)騒動(さうどう)。事(こと)の実否(じつふ)紛々(ふん〳〵)たれば
北条殿(ほうてうどの)を守護(しゆご)ならば格別(かくべつ)。御所(こしよ)へ参(まゐ)り給ふとならば。やはか壱人(いちにん)も通(とう)すまじ。
太宰少弐(だざいのせうに)大(おほひ)に怒(いか)り。推参(すいさん)なり金刺(かなざし)五郎。忠重(たゞしけ)は将軍(せうぐん)昵近(ちつきん)の者(もの)。北条氏(ほうてううじ)
の臣(しん)ならず。いかでか御所(ごしよ)へ参(まい)らずして。北条氏(ほうでううじ)を守護(しゆこ)せんや。勿論(もちろん)かゝる
珍事(ちんじ)と聞(き)かば。北条殿(ほうでうどの)にも一番(いちばん)に。御所(ごしよ)へ馳向(はせむか)ひ給ふべきに。自宅(じたく)に引籠(ひきこも)り
居(ゐ)給ふさへに。御所(ごしよ)を守護(しゆご)する我々(われ〳〵)を。引止(ひきとゞ)めらるゝ不審(ふしぎ) さよ。余人(よじん)は兎(と)