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舎弟(しやてい)に。名越遠江守朝時(なごしとう〳〵みのかみともとき)の嫡子(ちやくし)。越後守光時(えちごのかみみつとき)といふものあり。父(ちゝ)朝時(ともとき)は
去年(きよねん)卒(そつ)し。則(すなはち)光時(みつとき)家督相続(かとくさうぞく)なしけるが。光時(みつとき)兼(かね)て思(おも)ふやう。我(われ)いやしくも
泰時(やすとき)が甥(をい)に生(うま)れながら。北条(ほうでう)の氏(うじ)をも名乗(なの)らで。殊(こと)に我(わが)従父弟(いとこ)の子(こ)
に執権(しつけん)を奪(うばさ?)はれ。おめ〳〵膝下(しつか)に手(て)を拱(こまぬ)き。その命令(めいれい)を受(うく)る事(こと)。彼是(かれこれ)
無念(むねん)の事(こと)どもなり。哀(あは)れ折(をり)も哉(がな)。北条一家(ほうでういつけ)を打斃(うちほろぼ)し。一度(いちど)執権(しつけん)の職(しよく)を
努(つとめ)て。天下(てんか)の権勢(けんせい)を握(にぎ)らん事。武門(ぶもん)の誉(ほま)れ。此上(このうへ)やあるべきと。専(もつは)らその
時節(じせつ)を伺(うかゝ)ふ処(ところ)に。今般(こんはん)経時(つねとき)卒去(そつきよ)にのぞみ。須破(すは)この時(とき)を捨(すて)べからずと。
一族(いちぞく)但馬前司定員(たじまのぜんじさだかす)。同/嫡子(ちやくし)兵衛大夫定範(へうゑのたゆふさだひろ)【さだのりヵ】等(ら)を。密(ひそか)に話合(かたらひ)。その設備(ようい)
を做(なす)ところに。壁牆(へきしやう)に耳(みゝ)あり。岩石(かんせき)に口(くち)ある金言(きんごん)。誰(たれ)いふとなく在鎌倉(ざいかまくら)の
大名(たいめう)に。反逆(ほんぎやく)の設(まうけ)ありて。不日(ふじつ)に合戦(かつせん)あるべきと。一犬(いつけん)吼(ほゆ)れば。万犬(ばんけん)の諺(ことわざ)。商工(せうこう)
の輩(ともがら)老(をひ)を脊負(せおひ)。子(こ)を抱(いだ)き。資財(しざい)を肩(かた)にして山林(さんりん)にかくれ。又(また)は隣国(りんごく)に遁(のがれ)
さらんと。阡陌(せんはく)を縦横(じうわう)に奔走(ほんさう)せしかば。諸侯(しよこう)御家人等(ごけにんら)魁夫(はやりを)の面々(めん〳〵)は。甲冑(かつちう)に