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あれ忠重(たゞしげ)に於(おゐ)ては。通(とふさ)じとて通(とほ)らでやは。弥(いよ〳〵)通(とほ)さじと支(さゝ)ゆるは。御所(こしよ)に向(むか)ひて
弓曳(ゆみひく)に同(おな)じ。有左(さあら)ば猶更(なほさら)その備(そな)へ。うち破(やぶ)つても通(とほ)るべし。渋谷一党(しぶやいつとう)も大(おほひ)に
いかり。こは狼藉(ろうぜき)也/物(もの)ないはせそと。既(すで)に矢軍(やいくさ)を始(はじ)めんとす。此時(このとき)北条時頼(ほうでうときより)は。
馬上(ばでう)に狩衣(かりぎぬ)を着(ちやく)し。泰然(たいぜん)と両軍(りうぐん)の間(あいだ)に馬(うま)をとゞめ。執権時頼(しつけんときより)かた〴〵に。
申/示(しめ)す一儀(いちぎ)あり。鎮(しづ)まるべしと宣(のたま)へば。これを見て従卒等(じうそつら)。箭(や)を捨(すて)戈(ほこ)を
伏(ふせ)て平伏(へいふく)す。時頼(ときより)完(かん)【莞ヵ】爾(じ)として少弐(せうに)に向(むか)ひ。互(たがひ)の接話(せつは)。道理(どうり)を尽(つく)せり。
去(さり)なから。双方(さうほう)が行装(いでたち)更(さら)に心得(こゝろえ)ず。誰(たれ)を敵(てき)し何(なに)を仇(あだ)とし。甲冑(かつちう)兵杖(へうでう)は帯(たい)
し給ふや。巷(ちまた)の風説(ふうせつ)其原(そのもと)も糺(たゞ)さず。みだりに武器(ぶき)を携(たつさ)へ給ひて。御所(ごしよ)へ
向(うか)ひ給ふが故(ゆへ)押止(をしとめ)たるも一理(いちり)あり。又(また)此(この)騒動(さうどう)の其(その)根本(こんほん)。われ兼(かね)て其人(そのひと)
なるはしるといへども。更(さら)に驚怖(きやうふ)すべきにあらず。その所以(ゆへ)は。聊(いさゝか)将軍家(せうぐんけ)に
逆(ぎやく)せるにはあらず北条(ほうでう)が権勢(けんせい)を。羨(うらや)み妬(そね)む心(こゝろ)より。我一家(わかいつけ)を倒(たをさん)する隠謀(いんほう)
なり。故(ゆへ)に我(われ)直(たゞち)に御所(ごしよ)へ参(まい)らば。却(かへつ)て災(わざは)ひ䔥牆(せう〳〵)の内(うち)に起(おこ)らん。斯(かく)いはゞ