Gallicaの日本資料を翻刻!

コレクション: コレクション3

. Japonais 180-181 - 翻刻

. Japonais 180-181 - ページ 112

ページ: 112

翻刻

無体(むたい)に召捕(めしとつ)て評定所(ひやうでうしよ)へ立帰(たちかへ)り。一伍一什(いちぶしじう)を言上(ごんしやう)せしかば。時頼(ときより)速(すみやか)に 出座(しゆつざ)ありて。済田(さいだ)を庁前(ちやうぜん)に引出(ひきいだ)し。倩(つら〳〵)其人柄(そのひとがら)を見(み)て。抑(そも)汝(なんぢ)はいかなる者(もの) ぞ。済田(さいだ)慎(つゝしん)て頭(かしら)を下(さ)げ。某(それがし)は済田嘉傳次(さいだかてんじ)と申て。元(もと)は秩父家(ちゝぶけ)に仕(つかふまつ)りし 者(もの)。主家(しゆか)荒廃(くはうはい)して後(のち)。二君(じくん)に仕(つか)ゆる志(こゝろざし)なく。いさゝか里(さと)の子(こ)を集(あつ)め。手跡(しゆせき) 素読(そどく)を教導(きやうどう)して。煙(けふり)を細(ほそ)く立(たて)て候と申。公(こう)重(かさ)ねて。其(その)脇差(わきざし)は汝(なんぢ)が所持(しよぢ) なりや。さん候/尊命(そんめい)の如(ごと)く。元来(もとより)某(それがし)が秘蔵(ひさう)に候(さふら)ひしが。当春(とうはる)正月/五日夜(いつかのよ)。 近隣(きんりん)へ年酒(ねんしゆ)に迎(むか)へられ。尤(もつとも)孤独(こどく)の身(み)に候へば。戸〆(とじまり)厳重(きびし)に(く)仕(つかふまつり)たるに。その 留主(るす)を考(かんが)へ。いかゞしてか盗人(とうじん)忍(しの)び入(いり)。余物(よのもの)は其侭(そのまま)。此差料(このさしれう)のみ奪取(うばひとつ)て 候/哉覧(やらん)。其のち不通(ふつ)に紛失(ふんじつ)せしに。今暁(こんけう)しかも某(それがし)が。軒下(のきした)の洫(みそ)に有(あり)し事。 誠(まこと)に不審(ふしん)に候よしを答(こた)ふ。公(こう)のいはく。家秘(かひ)の剣方(けんたう)を奪(うばは)れたらんに。何故(なにゆへ)官(くはん)へ 訴(うつた)へざる。済田(さいだ)恐入(おそれいり)て。御察当(ごさつとう)申/披(ひらく)に由(よし)なく候。去(さり)ながら。家(いゑ)に伝(つた)えたる重(てう) 宝(はう)を。人に盗(ぬす)み取(と)られたるは。皆(みな)某(それがし)が不覚(ふかく)にて。全(まつた)く此身(このみ)の恥辱(ちじよく)なるを。